第28話 えらく遠いおつかい

 道の脇に座り直して広げた弁当を吟味する。

 弁当の中身はおにぎりと卵焼き、そしてポテトの豚肉巻き。

 シンプルだがアリシアの気分は向上していた。


「やっぱりお弁当はおにぎりだよね〜。お弁当と一緒に2つ水筒が置いてあったけど、何で2つなんだろ?」


 弁当を半分くらい食べたところで、とりあえず置いてあったから持ってきた水筒の中身を確認する。

 蓋を開けてコップ代わりになる蓋へ注いでみると、1つは冷えたお茶、もう1つは温かい卵スープだった。


「スープとか、リコちゃんは気が利くなぁ」


 弁当とスープに舌鼓を打っていると通りかかった荷馬車が止まり、おじさんが声を掛けてきた。


「お嬢ちゃん、旅の人かい?」


「ううん、違うよ。隣国のサウズ帝国にあるスモル町におつかいなの」


「えらく遠いおつかいだね」


「うん。でも、疲れちゃったからお弁当食べて帰ろうと思ってたの」


「おつかいをほっぽり出して大丈夫なのかい?」


「うーんと、凄く怒られるかも……お店もなくなっちゃうかもだし……どうしよう」


「何かワケありみたいだね。良かったら乗ってくかい? 俺はスモル町の人間でね。売り物が無くなったから町へ品物を補充しに行くところなんだ」


「いいの?」


「ああ、構わないさ」


「ありがとう、おじさん!」


「おじさんだけどおじさんって呼ぶのは勘弁してほしいな。俺はウラジールだ。よろしくな」


「私はアリシア。よろしくね、ウラジールさん」


 アリシアはたまたま通りかかった露天商のウラジールの荷馬車に乗せて貰い、目的地の近郊であるスモル町へウラジールと話をしながら向かった。



 ウラジールから話を聞くところによると、リコッタの情報に間違いはなかった。

 近郊の平原に出るコケトリスは最近、縄張りをスモル町の方まで広げてきていて、農作物を食い荒らしている。

 アリシアがコケトリスを討伐する為に来たと聞いたウラジールは驚いた。


「アリシアちゃんは肉屋なんだろ?」


「うん、そうだよ」


「なら、辞めときなって。中堅の冒険者でも手を焼くモンスターなんだから、アリシアちゃんには無理だよ」


「そうかなー。大きなニワトリさんでしょ? それに倒したら町の人も助かるんじゃないの?」


「確かに俺達は助かるけども……大丈夫なのかい?」


「ニワトリさんを持って帰らないと怒られちゃうし」


「うーん……そこまで言うなら止めはしないけど」


 納得はいかないが、アリシアを説得するのは無理だと判断したウラジールは荷馬車を止める事無く走らせた。

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