第27話 本当に大丈夫なのかよ

 出立は開店準備をする時間と同じ7時。

 翌朝、7時になっても部屋から出て来ないアリシアの部屋へ業を煮やしたリコッタがやってきた。


「アリシア! いつまで寝てるんだ! ……って、あれ? 起きてたのか」


「リコちゃん、おはよぉ……」


「え、あ、おはよう……。おい、アリシア。何か様子がおかしいぞ」


 リコッタが言うようにアリシアの目は充血していて、顔も少し窶れていた。


「ワクワクし過ぎて全然眠れなくて……へへ」


「いや、全く笑えねぇよ。そんなヘロヘロで隣国まで行ってモンスターを狩れるのか?」


「だいじょーぶ、だいじょーぶ……おっとっと……」


 リュックサックを背負ったアリシアはバランスを崩してヨロヨロと壁にぶつかり、体勢を整えるとフラフラしながら部屋を出て行く。


「お弁当はキッチンにある?」


「ああ。朝飯も用意してあるから食って出発しろよ」


「うん」


「弁当の事を考えられるくらいだから大丈夫か」


 アリシアの部屋で見送ったリコッタが少しばかり安心して間もなく、ドタンバタンという大きな音とアリシアの短い悲鳴が聞こえてきた。


「――はきゅっ!」


「どうした!?」


 慌てて音がした階段の方へ駆け寄ると階下で床にペタンと座って頭を摩っているアリシアがいた。


「へへへ……階段から落ちちゃった」


「落ちちゃったって……今日は辞めとくか?」


「へーき、へーき。じゃ、行ってきまーす」


「弁当と朝飯忘れるなよ?」


「うん」


 アリシアは階下から姿を消しても尚、時々壁などに当たる音が聞こえてくる。


「本当に大丈夫なのかよ。はぁ……とりあえず、本人は大丈夫って言ってるし、ミリアを起こしに行くか」


 アリシアを再度見送ったリコッタはもう1人の問題児ミリアの部屋へ向かった。



 リコッタがミリアを起こすのに苦戦している間にアリシアは朝食を済ませ、弁当をリュックサックに詰め込んで隣国へ向けて店から出発した。

 朝食で幾分か元気になったアリシアの足取りは店を出る前より軽い。


「さっきはフラフラだったけど、今は元気いっぱい! やっぱりリコちゃんのご飯は凄いや! これならどこまででも行ける気がする」


 意気込んで歩みを進めていたアリシアだったが、


「うへぇ〜、もう無理〜。後、どれだけ進めば着くかな? ……まだこんなにあるの!?」


 昼前にはバテて、地図を確認してまだ3割くらいしか進めていない事に心が折れそうになる。


「これじゃあ、着く前に死んじゃうよ〜……」


 道端に大の字で寝転がって暫く天を仰いでいるとアリシアの腹から空腹の音が鳴る。


「お腹空いたなぁ……。ここでお弁当にしようかな。先のことはお弁当食べてから考えればいいや」


 体を起こしたアリシアはリュックサックから弁当を取り出した。

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