第25話 いいの? ダメなの? どっち!?

「そもそも倒せる冒険者がひと握りしかいないようなモンスターをアリシアちゃだけで倒せるなのよ?」


「確かにそこはオイラも懸念していたところだ」


 少しだが一戦交えて、森の主を難なく仕留めるところを目撃したリコッタですらアリシアが階層ボスを倒せるかどうかが不安だった。


「だから、まずは別のモンスターを狙おうと思う」


「いっぱい印があるのにどれを狙うなのよ。まさか順番に潰して行くって言わないなのよ?」


「片っ端から行くのが手っ取り早いけど、オイラ達には時間がない。って事で、今欲しい系統の肉になりそうなのをピンポイントで狙う」


「欲しい系統の肉なのよ?」


「今のところウチの店はジビエ系とモンスターの肉しか売っていない。これじゃあキワモノしか売ってない店だ。そこで狙うのはこのモンスターだ」


 リコッタは地図に書かれた1つの印を指さした。


「なんでこのモンスター? それにそこは隣の国の領地なのよ。態々隣の国まで行かなくてもミリの国の領地にも印はあるなのよ」


「そこが狙いだ」


「どういう事なのよ?」


「コイツは『コケトリス』といって、簡単に説明すると2階建てくらいある大型のニワトリに似たモンスターだ。近くに小規模だが、町があるだろ? そこの人達はコイツに悩まされているらしい」


「まさか人助けする為に狙うなのよ? そんなのお人好しが過ぎるなのよ」


 表情を曇らせるミリアへリコッタは得意気に理由を説明する。


「確かに人助けだが、目的はその先。悩みの種を取り除いて恩を売って店の宣伝をする。他国から客が来れば情報も集まりやすい。つまり、肉・客・情報の3つを一気に手に入れる作戦だ」


「そんなに上手くいくなのよ?」


「やってみても損はないだろ? 国内で客を奪い合っていてもイタチごっこだし」


「それもそうかなのよ」


「ねぇ、決まった?」


 話し合いに終わりをみたアリシアはあっけらかんと声をかける。


「ん? あ、ああ。そういえばアリシアも居たんだな。静かだったから忘れてた」


「ミリもアリシアちゃが居ないもんだと思っていたなのよ」


「酷いなぁ、2人とも。難しいお話してたから入れなかっただけだよ!」


「ははは、アリシアには難しかったか。すまんすまん」


「アリシアちゃはおバカだから仕方ないなのよ」


「むむぅー!」


 小馬鹿にされてアリシアは頬を膨らませて怒った。


「ま、そう怒るなって」


「そうなのよ。機嫌をなおすなのよ」


「むっ!」


 怒るアリシアは2人の前に手のひらを上にして手を突き出した。


「何だ?」


「手を攣ったなのよ?」


「お小遣い! 狩りに行く時のお小遣いくれたら許してあげる!」


「「はぁ……」」


 溜め息をついて顔を見合わせアイコンタクトをとったリコッタとミリアは面倒だからアリシアの要求を受け入れる体制に入った。


「いくらだ?」


「経済状況からしてあまり多くは出せないなのよ?」


「5百モル! あと、お弁当も用意してね!」


 アリシアが提示した要求にリコッタとミリアは驚いた。


「お、思っていたより安いなのよ」


「要求がピクニックへ行く子どもレベルだな……」


「いいの? ダメなの? どっち!?」


「いや、まぁいいけど……逆にこっちがいいのか聞きたいくらいだよ」


「わぁーい! やったー!」


「こんなので機嫌をなおすとか、単純なのよ」


 途中アリシアが機嫌を損ねるというハプニングがあったものの次の目的が決まった。

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