第24話 店のウリ
泣いているアリシアを見かねたミリアはお茶を1口飲んでヤレヤレといった感じで口を開く。
「はぁ……そんなに落ち込まなくてもいいなのよ」
「でも……」
「他の店で買っても問題ないというのは裏を返せばこの店でしかないものを作ればいいだけなのよ」
「そんなの出来るの?」
「『出来るの?』じゃなくて『する』なのよ。アリシアちゃは1人で店をやってるわけじゃない、ミリやリコッタちゃもいる。みんなでどうすればいいか考えるなのよ」
「ミリちゃん……うん! そうだね! みんなで考えよう!」
ミリアの言葉でアリシアは泣き顔から笑顔へと変わり、そこへリコッタがタイミング良くリコッタが帰ってきた。
「ただいま――ん? どうした? アリシア。泣いてたのか?」
泣き止んでいたものの、まだ目は赤く、頬に涙の跡があるアリシア。そこにリコッタは帰ってくるなり気付いた。
「泣いてないよ」
強がってバレバレの嘘をつくアリシア。
「しおしおしてボロボロ泣いてたなのよ」
間髪入れずアリシアの嘘をバラすミリア。
「なんでバラすの!? ミリちゃん」
「嘘は良くないなのよ」
「で? 何で泣いてたんだ?」
「えーっと……」
アリシアは経緯を話して、少し恥ずかしそうにする。
「……って感じかな。えへっ」
「『えへっ』じゃねぇよ。ミリアみたいなチビッ子に正論パンチされて泣くとかどんだけだよ」
「チビッ子じゃないなのよ」
「それでねー、みんなで何か考えようってなったの」
「『みんなで考えよう』か……あっ! それならいいのがあるぞ」
「なになに?」
「その前に手に入れてきた情報を見てくれ」
リコッタはテーブルへ印や字を書き込んだ大陸地図を広げた。
「いっぱい印付けてあるね」
「字が汚くて読めないなのよ」
「字が汚いのは気にしないでくれ。とりあえず食肉になりそうなモンスターがいる場所に印を付けておいた」
「へぇー、結構いるんだね」
「冒険者や協会から聞いたモンスターの特徴でオイラが食肉になりそうだと判断したものだから、印の数は正確じゃない。それ以外にもあるかもしれない。これはあくまで目安だ」
「いいものってこれなのよ?」
「まぁそんなに急くなって。ここから、ここから」
リコッタは広げた地図にある印を指でさして説明する。
「まずはここ。王都からそう離れてない場所にダンジョンがある。ここにいる階層ボスってのが食肉になりそうだ」
「海藻ボス? 海藻って海にあるアレだよね? 海藻なのにお肉になるの?」
「そっちの海藻じゃねぇ! 1階2階の方の階層!」
「なーんだ、ビックリしたー」
「話を戻すぞ」
「うん」
「んで、この階層ボスってのは倒しても定期的に復活するらしい」
「ふーん、それがどうしたの?」
「なるほどなのよ」
「お、ミリアはわかったみたいだな。定期的に復活するって事は、この階層ボスが食肉として使えるなら断続的に仕入れれる上にウチの店のウリに出来る。階層ボスを狩れる肉屋なんて他にはいないからな」
「でも、肉屋は狩れなくても冒険者に依頼して狩ってきて貰う心配はないなのよ?」
「そこも大丈夫だ。階層ボスは強いらしいから冒険者でも倒せるのはひと握りって話だ」
「それなら大丈夫だね」
「喜ぶのは早いなのよ、アリシアちゃ。まだ問題があるなのよ」
早々に安心するアリシアへ注意をして、ミリアは少しでも不安要素を取り除こうとする。
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