第23話 ハッキリ言わなくても……

 店に残ったアリシアとミリアは店を開け、営業を開始する。

 開店前から並んでいた客の数は前日とさして変わらない。リコッタの指示通りに訪れる客に事情を説明していくと、効果はすぐに現れた。

 午前中に訪れた客は40名程度。売れた肉も25キロで、午後に入ったところで客足はぱったり止まった。

 客が来なくなったので休憩にして物置からテーブルと椅子を持ってきて店内の窓際に設置し、リコッタが作っておいてくれた昼食のサンドイッチをそこで食べながらアリシアとミリアは会話を交える。


「このサンドイッチ美味しいね」


「色んな物が挟んであって美味いなのよ。城では食べた事ないなのよ」


「へぇ〜、お城生活も結構不便なんだね」


「退屈で自由もあまりないなのよ」


「大変だね。……お城って言えば、ミリちゃんが事情を説明してお客さん来なくなったから良かったぁ。これでお店を閉めずにいけるね」


「良くもあって悪くもあるなのよ」


「良い部分は営業が続けれる事だよね? 悪い部分ってのは売り上げの事かな?」


「それもあるなのよ。昨日の売り上げからかなり落ちたけど、元手が殆ど掛かっていなくて道具や肉の補充にも費用が最小限で済む。それに加えて人件費もまだ決まっていない今の状況では落ちた売り上げでもかなりの黒字。これがアリシアちゃが言った事以外の良い部分なのよ」


「ふむふむ」


「悪い部分は城の関係者が来なければ客が殆ど来ないって事なのよ」


「えー!そんな事ないよー。お城の人が来なくてもお客さんは来るよー」


 アリシアの反論にミリアは大きく溜め息をついて店内の中央へと顔を向けた。


「アリシアちゃの目は石ころなのよ? 実際に城の関係者が来なくなってから2時間は経つのに客は1人も来ていないなのよ」


「うっ……でもでも、これから来るかもしれないし……」


「店を続けていくなら日に数人来て、数キロ売れていくくらいじゃ話にならないなのよ」


「じゃ、じゃあ、お城の人を毎日来させれば……」


「それは出来ない相談なのよ。城の関係者が今、来ているのはミリが居るから挨拶する為。社交辞令の延長で肉を買って行ってる。だから、代金は国金、要は城の経費で落としているなのよ。挨拶が終われば来ないなのよ」


 アリシアは諦めがつかず食い下がる。


「でもでもでもー、何度も来ている人も居たし……」


「それは代理で来ていただけなのよ。アリシアちゃ諦めて事実を受け入れるなのよ」


「うぅ……」


「ミリが事情を説明して促したとはいえ、それで客足がピタリと止まるって事はこの店で肉を買わなくても問題ないという事なのよ」


「そんなにハッキリ言わなくても……うぅ」


 ミリアの厳しい言葉にアリシアは段々萎れていき、終いには下を向いてポロポロと涙を零し出した。

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