第20話 この世の理

 すでに表情を曇らせているリコッタとミリアがつられて首を縦に振るようにアリシア明るく、そして軽く振舞ってみせる。


「みんなでモンスター狩りに行こっ!」


「「……はぁ……」」


 アリシアの振る舞いも虚しくリコッタとミリアは溜め息を一つついて反論する。


「却下だ」


「ミリも同じくなのよ」


「えーっ!? 何で!?」


 自身が見せた振る舞いで確実に賛成してくれると思っていたアリシアは驚いて前のめりになって問いかける。


「『何で』って言われても……問題点が幾つもあるだろ。よく考えてみろよ」


「うーん……わかんない」


「あのなぁ……。じゃあ言うが、アリシアは素で強くてオイラも元軍人だから戦闘経験や知識もそれなりにある。だけど、ミリアはお姫様だぞ? モンスターと戦えると思うか?」


「うん」


「何でそう思うんだよ」


「可愛いから」


「は?」


「可愛いは正義だし、可愛いは何よりも強いんだよ」


 リコッタの問いに対してアリシアの返答は理解し難いもの。しかし、その返答はアリシアにとっての常識で、返答を口にするアリシアは自信に満ち溢れた顔をしていた。


「何だそりゃ」


「知らないの? これはこの世のことわりだよ。ね? ミリちゃん」


「そうなのよ」


「ミリアまで何言ってんだ……。アリシアの言ってるのを認めるって事はモンスター狩りの頭数にミリアも加えられるんだぞ。どう見ても強そうには見えないんだが」


「ミリは強いなのよ」


「根拠は?」


「この世で1番可愛い姫だからなのよ」


「意味がわからん」


 アリシアのみならず、ミリアもまた一般常識とは違う常識を持った存在だった。


「まぁ戦闘力はあるって事にして、じゃあ何でミリアはアリシアの提案を却下したんだ?」


「お洋服が汚れるのが嫌なのよ。あと運動したくないなのよ」


 アリシアとミリアに頭を抱えるリコッタは別の切り口を試みる。


「ミリアの返事は置いといて、別の問題点を話そうか」


「置いとかないで欲しいなのよ」


「ちょっと黙ってろ」


「はいなのよ……」


「戦闘面では問題ないとしても、次に狩るモンスターの目星はついているのか? 目星がついていたとして、その場所への距離とかかる時間は? 手に入れた肉を運ぶ手段と店に着くまでの保存方法は?」


「まだ何も決めてない」


「おい、決めてから提案しろよ! それにみんなで狩りに行ったら明日以降の営業はどうするんだよ」


「あっ、そっか! お店が空になっちゃうね。忘れてた」


「おいおい……」


「ねぇ、リコちゃん」


 提案にことごとく問題があって困ったアリシアは椅子から立ち上がってリコッタのところへ行き、しゃがんでリコッタの腰に手を回し上目遣いで顔を見つめる。


「な、何だよ」


「狩るモンスターのあてがないから探してきて」


「自分で行けよ」


「私はその……忙しいから」


「作業は分担してるのに何でアリシアだけ忙しいんだよ」


「うーんっとそれは……店主だからかな?」


「何で疑問形なんだよ。ったく、埒が明かねぇ」


 話が好転していかない事に業を煮やしたリコッタは妥協案を口にする。

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