第19話 借金地獄
夕飯は端肉とスライスした玉ねぎを甘辛いタレを絡めて炒めた物をどんぶりの白米に盛り付け、中央に卵黄を乗せた肉丼。
大衆食堂では割とありがちな品だが、城住まいで高級育ちのミリアには珍しい物に見えて大はしゃぎ。
大食らいのアリシアに負けず劣らず、小さな体で5杯も平らげた。
賑やかな食事を終え、本題に移る前に談話する。
「物凄く美味かったなのよ」
「へへっ。そんなに褒めるなよ、照れるぜ」
「こんなウメェ物を庶民は毎日食べてるなのよ?」
「安価で一般的なお料理だけど、流石に毎日は食べていないよ」
「そうだな。オイラも1ヶ月に3回くらいしか食べないなー。他にも美味いもんは沢山あるし」
「これよりウメェ物があるなのよ!? 城のシェフが聞いたらビックリするなのよ」
「そうか? 驚かないと思うぜ。城のシェフになれるくらいだから、これくらいは作れるだろ」
「それは本当なのよ!? いつか城に帰ったらシェフに作らせるなのよ」
「その時は私も呼んでね。シェフの作ったお料理食べてみたいから」
「アリシアは食い意地張ってんなぁ」
一頻り談話して落ち着いた後、メインの話題へと切り替える。
「じゃあ、そろそろお店の話をしよっか」
「ああ。で? 今日の売上は?」
「ジビエが33万5千。モンスターの肉が45万。人件費はまだ決まってないから暫定での営業利益は78万5千なのよ」
「そっかぁ。お給料も決めないとね〜」
「普通は先に決めるもんだけどな。それにしても中々の黒字じゃないか」
「今回は人件費以外に包装材料、仕入れ費、設備管理費を計算に入れてないから大きな黒字になるのは当然なのよ」
「あっ、そうか。全部元からある物を使って、仕入れも自分達でやったからか」
「それも踏まえてこの先の事も考えないといけないね〜」
「そうだな。まずはどれを議題にするんだ?」
「うーんっと……お給料を先に決めたいところなんだけど、1つ早急に考えないといけない問題があるの」
「何かマズイ事があるのか?」
「うん。いっぱいお客さんが来て売れたのは嬉しいけど、お肉がもうモンスターのお肉しか残ってなくて、しかも仕入れた量の半分になってるの」
「そりゃマズイな」
「在庫はないなのよ?」
「うん。当分はこれでいけると思ってたんだけど、この分だと明日で全部無くなっちゃう」
「黒字になったから、黒字分で仕入れをすればいいなのよ」
「それが……ミリちゃんにはまだ言ってなかったけど、業者にはツケが貯まってるの。ツケを払っても信用がないから先払いになると思う」
「ちなみにツケはいくらくらいなのよ?」
「牛・豚・鳥は各大手の業者から卸してて、1番ツケが貯まってないとこでも200万かな」
「そんなにあるのかよ!」
「借金地獄なのよ……。そんなのでこの先どうやっていくつもりなのよ」
「うんとね、そこで提案があるんだけど」
「アリシアの提案……何か嫌な予感しかしないんだが」
「同感なのよ」
リコッタとミリアが表情を曇らせる中、アリシアは浮かんだ案を提示した。
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