第18話 ちょっとガッカリ

 並んでいる人数はざっと見て20人。ふと我に返ったアリシアは急いで店内に戻りこの事を伝えて指示を出した。


「いっぱいお客さんが並んでる!」


「やったーなのよ」


「チラシ配りの効果か? 何にせよ、良かったじゃねぇか」


「手ぶらで喜んでる場合じゃないよ! ショーケースのお肉だけじゃ足りなくなると思うの。人手も足りないし……。ミリちゃんはお会計をしつつ出来たら包装もお願い」


「わ、わかったなのよ」


「リコちゃんは冷凍のお肉の解凍と切り分け。私は接客をする合間にリコちゃんから渡されるお肉を部位に合った厚さに切るから」


「おう」


「来たよ!」


 アリシアが指示を出し終えたところで並んでいた客が次々と店内へ入ってくる。

 開店前から並んでいた客を捌いた頃にはまた新しい行列が出来ていて息をつく暇もなかった。

 客層は年齢も性別もバラバラ。統一されていたのは何故かミリアに必ず挨拶をしていく事とジビエ系の肉から買っていく事。

 モンスターの肉は馴染みがなく、最初は誰も買おうとはしなかった。

 しかし、午前中にジビエ系の肉が売り切れて仕方なくモンスターの肉を買っていった客が暫くしてからまたモンスターの肉を買いにきたおかげでモンスターの肉も中々の売れ行きを出した。

 休憩も取れずに閉店時間まで働いていた3人は店を閉めてすぐさまダイニングキッチンへ行き、お茶をいれて一息ついた。


「流石に疲れたぜ」


「そうだね。でも、いっぱい売れたからいいじゃん」


「たしかに」


「そういえば、何かみんなミリちゃんに挨拶していったけど……ミリちゃんの知り合いなの?」


「全員、お城で働いてる人なのよ」


「って事は一般の人は……」


「人っ子一人居なかったなのよ」


「なんだぁ……ちょっとガッカリ」


 少しばかり落胆するアリシアに対してリコッタは飄々とした様子でミリアに疑問をぶつける。


「アリシアはガッカリしてるけど、売れれば店的には問題ないからいいとして……城の従者って事はもしかして経費で落としてるとか?」


「そうだけど、それがどうしたなのよ」


「いや……ミリアがそれでいいなら別に……」


 ミリアは庶民の生活を体験しつつ国金の節制をする目的でアリシアのところでバイトをしているのに、肉の購入金を国の経費で落とすという自分の首を自分で締めているような行為に全く気付いていなかった。


「ねぇ、難しい話は後にしてご飯にしよ? もうお腹ぺこぺこだよ〜」


「ミリもお腹減ったなのよ」


「お、おう、そうだな。とりあえず話は後にするか」


 諸々の話を後回しにして3人は夕飯を食べる事にした。

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