第14話 お茶を飲み終わるまで
髪は乱れ、靴も片方脱げ、いよいよ身に危機が迫った時、ミリアは2人が手を止める発言をした。
「やめないと処刑するのよ!」
「くっ! 処刑……どうする? アリシア」
「う〜ん……もっと触りたかったけど、処刑されるのはちょっとねぇ……」
手を止めたアリシア達は見合わせてアイコンタクトをした後、ミリアから離れて牢屋の鉄格子の方へ行ってその前で足を止めた。
「ど、どうしたのよ?」
「どうしたも何も帰るんだよ」
「大人しく捕まってあげたけど、お茶と焼き菓子を貰えただけだったし……。あーあ、開店初っ端にお店閉めてきて損した」
「チラシ配りを再開してもう1回頑張ろうぜ?」
「そうだね。じゃ、ミリちゃんバイバイ」
「バイバイって……どうやって出るつもりなのよ?」
ミリアの問いに答えるようにアリシア達は鉄格子を掴んでグニャリと鉄格子をひん曲げて通れるだけの隙間を作った。
「これで帰れるな」
「だね!」
「ウソ……」
呆気に取られたミリアは首を振ってすぐ我に返り、今にも泣きそうな顔で2人を呼び止めた。
「待って! お願いだから話を聞いて欲しいのよ!」
あまりにも必死に見えるその表情と声に鉄格子の外に出たアリシア達は引き返して牢屋の中へ戻りテーブルへついた。
「あ〜、運動したら喉が渇いたぜ。な? アリシア」
「そうだね。私達、お茶を飲み終わるまで帰らないから」
態とらしく振る舞うアリシア達の意図を察し、ミリアもテーブルにつく。
「2人ともありがとうなのよ」
「礼はいい。要件を早く言ってくれ」
「要件次第ではすぐ帰るからね」
「わかったなのよ。実は今、イーズ国の財政が傾いているのよ」
「ほほぅ。それとオイラ達と何か関係があるのか?」
「財政難が続けば国が疲弊していずれ無くなる。無くならなくても他国の属国になる事も考えられるのよ」
「属国ならまだしも無くなるのは困るね」
「住民に対して税の徴収を上げれば国の財政難は免れるかもしれないけど、住民が移民する可能性も高い。ならば、それをするまでに何か出来る事はないかと考えたわけなのよ」
「その考えとは?」
「まずは国のトップであるミリが住民と同じような生活を体験して住民の気持ちをしりつつ、実績を作りあげるつもりなのよ。トップが節制しているのをみれば住民も意見に賛同してくれる人が増えるかもしれないからなのよ」
「へぇ〜、色々考えてるんだね〜。偉い、偉い」
アリシアはミリアの頭を撫でて褒める。ミリアもミリアで満更でもない様子で少し照れていた。
「そこで住民の生活を体験する為にバイトをしようと思って、オメェらをひっ捕まえて頼もうとしたのよ」
「捕まえなくても店に来ればいいだろ」
「そ、そうか……その手があったのよ」
「何かズレてるなー。ところで、何でバイト先をミートマスターにしようと思ったんだ?」
「城によく来ていたジジイが優しそうだったからなのよ。生憎、今日はジジイが居なかったみたいだけど」
「お爺ちゃんは死んじゃったよ。今は私とリコちゃんだけでお店をやってるの」
「ご、ごめんなさいなのよ……」
「別にいいよ、気にしなくて」
「そう言ってくれると助かるのよ」
「話を戻すけど、働くにはまず面接。だから、これからミートマスターで働けるか面接をするよ。いいかな?」
「わ、わかりましたなのよ」
牢屋の中でアリシアとリコッタによる面接が始まった。
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