第13話 悪漢化

 牢屋に入れられた2人は少し戸惑っていた。


「何だ、これ? 牢屋なのに絨毯が敷いてあるぞ」


「お茶も置いてあるよ!」


 4メートル四方の牢屋の中には絨毯が敷いてあり、中央に丸いテーブルと3つの椅子が設置してあった。

 その上、テーブルにはティーセットと焼き菓子まで置かれている。


「ねぇ、とりあえず座ってお茶しよ? それ以外する事ないし」


「おう、そうだな」


 呑気にお茶をしていると牢屋の前へ兵士と背が低い女の子がやってきて、兵士が牢屋の扉を開けると女の子が中へ入った。


「貴様ら、粗相のないように」


 兵士はアリシア達に注意をして牢屋の扉を閉めると去って行った。


「粗相って何だよ」


「お茶を絨毯に零しちゃダメだよって事じゃないかな?」


「あー、なるほど。高そうな絨毯だもんな」


「ウチにも欲しいねー、こういうの」


「そうか? あまり必要には思えないが」


 入ってきた女の子に見向きもせず、アリシア達はお茶を飲みながら会話をしていた。

 入ったところで話しかけられるのをずっと待っていた女の子はしびれを切らしてアリシア達へ言葉を放った。


「ちょっとくらい興味を持ってなのよ!」


 女の子の言葉でアリシア達はやっと話しかけた。


「何だよ、喋れたのか」


「リコちゃん、見て! この子、すご〜く可愛いよ! 髪も綺麗だし。それにお洋服も何か高そう」


 アリシアの言う通り、女の子は腰まである艶やかな長い水色の髪に整っている幼顔。着ている服は良い生地で拵えた肩出しの桃色ドレスで高貴な感じを醸し出していた。


「言われてみれば確かに、高そうな服だな。牢屋にぶち込まれたのに高そうな服を着やがって、何様だ?」


「私達は謙虚にメイド服と軍服なのにね。身ぐるみ剥いで服を頂いた上に弄んじゃおうか?」


「着ている物を売っぱらって、コイツも売っちまえば店の利益の足しになりそうだ」


「えーっ!? この子、売っちゃうの? 私が欲しいなぁ」


「そこはアリシアの好きにしろよ」


「うん! じゃ、私が本体貰うね」


 牢屋に入れられて数十分でアリシア達は悪漢みたいになっていた。

 ジリジリと躙り寄るアリシア達へ女の子は再び言葉をぶつけた。


「近寄るな無礼者! ミリはミリア・シルフィ! この国を治める姫なのよ!」


 姫と聞いて悪漢化していたアリシア達の動きがピタッと止まる。


「お姫様? リコちゃん、知ってる? 軍に居たんでしょ?」


「う〜ん……オイラ、姫さんには会った事ないからなー」


「そっかぁ。えっと……ミリちゃんだっけ? もし、ミリちゃんがホントにお姫様だとして、どうして牢屋に入れられてたの? つまみ食いした罰とか?」


「姫を気安く呼ぶなんて……まぁいいのよ。ミリは入れられたんじゃなくて、オメェらと話がしたくてこの場を設けたのよ」


 ミリアのセリフでリコッタはある事を思い出した。


「あっ! そういえば、オイラ達が捕まった理由って姫さんの命令だったよな?」


「あー、何か兵士さんがそんな事言ってたね」


「じゃあ、牢屋に入ってるのはコイツのせいじゃないか!」


「そっか! なら、腹いせにやっぱり身ぐるみ剥いじゃおう!」


「そうだな! そうしよう!」


「や、やめるのよーっ!」


 2人は悪い顔をしてミリアを押さえつけて服に手をかけた。

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