第9話 スベスベのモチモチ
食事を終えて後片付けも当然の如くリコッタがする。その間、呑気に食後のお茶を啜っていたアリシアだったが、突然何かを思い出したかのようにダイニングキッチンから出て行った。
洗い物を終わらせたリコッタがテーブルでお茶を飲んで一息ついているとアリシアがタオルや衣類を持って戻ってきた。
「リコちゃん、一緒にお風呂入ろ!」
「風呂か。オイラは1人でゆっくり入りたかったけど……まぁいいか」
「はい、これ! リコちゃんのタオルとパジャマね」
アリシアはタオルとパジャマをテーブルの上へ置いた。
「パジャマ……オイラ、パジャマは着ないんだけどなー……」
「私とお揃いだから着てね」
「うーん……着るかどうかはさておき、風呂に行くか」
「うん!」
コップを片付けてリコッタとアリシアは風呂場へ向かう。
脱衣して浴室へ入ったリコッタは少々驚いた。
「へぇー、結構広いな。それに綺麗にしてあるな。掃除が苦手じゃなかったのか?」
「お風呂掃除くらいは出来るよ。それにここ数週間くらいお水が止まってたからお風呂入ってなかったし」
「そうか」
アリシアの数週間風呂に入っていなかった発言にリコッタは驚きもしなかった。
何故ならリコッタも軍事で何日も風呂に入らない事があったからだ。
「ねぇ、洗いっこしよ」
「嫌だ」
「なんで〜?」
「自分の体は自分で洗いたいんだ」
「じゃあ、リコちゃんは自分で洗って、私はリコちゃんに洗ってもらう。決まりね!」
「は? 自分で洗えよ」
「嫌! もうリコちゃんに洗ってもらうって決めたんだもん!」
ワガママを突っぱね過ぎてアリシアの性格が卑屈になってしまってはいけないと思い、多少のワガママは聞いてあげようとリコッタは思った。
「はぁ……ったく。今回だけだからな」
「やったー!」
自身の体を洗い終え、リコッタは待っている間も大人しくしてたアリシアを洗い始める。
「ねぇ、リコちゃん」
「ん? 何だ?」
「リコちゃんっておっぱい大きいね」
「ああ、邪魔だけどな。それにアリシアも大きいじゃないか」
「リコちゃんには負けるよー。それとリコちゃん、軍人さんだったのに肌も綺麗だしケアとかしてたの?」
「特に何もしてねぇよ。ほい、終わり」
アリシアの頭をポンと叩き、洗い終えたのを告げて湯舟へ浸かるリコッタ。その後を追ってアリシアも湯舟に入り、リコッタへ寄って腕に抱きつく。
「おい、広いんだから離れろよ」
「リコちゃんの体、スベスベのモチモチで気持ちいい〜」
「人の話聞けよ」
「聞こえな〜い」
「都合の悪い事は聞こえないのかよ……はぁ」
リコッタは諦めてそのままでいた。
風呂からあがった2人は居住スペースへ行く。
「おやすみ、アリシア」
「リコちゃん、おやすみ」
通路で挨拶を交わし、各々は自室へ入る。
リコッタが選んだ部屋には必要最低限の家具が揃っていた。
タンスにベッド、机と椅子。壁には服を掛けるフックも取り付けられている。
「アリシアには悪いけど……」
リコッタは部屋に入ってすぐにパジャマを脱ぎ、タンクトップとパンツだけの姿になる。
「ふはぁ〜、やっぱりこれが1番楽だぜ」
楽な格好になったリコッタはリュックに纏めて持ってきた最低限の荷物に手をつけ、片付けていく。
サバイバルグッズはリュックの中に残してタンスの隣へ、衣類はタンスの中へ入れて軍の印が取られた軍服はハンガーを通して壁のフックへ掛けた。
「まさか、軍から追い出されて肉屋になるとはな……」
感慨深く軍服を暫く眺めたリコッタはベッドへ入った。
「フカフカして日の匂いがする。いつか誰かが来る時を待ちわびながら毎日部屋の手入れだけはしてたのかな……。もうちょっとくらいワガママを聞いてやってもいいかな」
アリシアの想像をしてリコッタは照明を落とし、ウトウトと眠りにつき始めた。
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