第6話 不思議だね

 階段側から作業場に入って左側の壁にキッチンへの扉がある。

 中は割と広く設備や道具が揃ったカウンターキッチンに4人掛けのテーブルが置いてある所謂、ダイニングキッチンだ。


「へぇ〜、結構綺麗にしてるじゃん」


「私1人になってから使ってないからね。風通しと拭き掃除はしてるけど」


「……すまん」


「どうしたの?」


「いや……1人になって寂しいのに思い出させるような事を言っちまったからさ」


「別に気にしてないよ? 1人でも楽しかったし」


「そ、そうか」


「ねぇ、早くご飯作ろ? 買ってきた食材は冷蔵庫に入ってるから」


「そうだな」


 アリシアに促され、冷蔵庫を開けて中を確認するリコッタ。


「レタスにジャガイモ、ニンジンとブロッコリー……それとトウモロコシ。色々買えたんだな」


「調味料も一通り揃えたよ。余ったお金全部使って」


「は? 全部?」


「うん、全部」


「何で全部使ったんだよ。借金もあって、店は2年以上開けてないから客が来るかも分からないんだから節制しろよ」


「節約苦手〜」


「苦手って、あのな〜……。で? アリシア、アンタは何してんだ?」


 呆れながらも注意するリコッタの視線の先にはテーブルのイスに腰掛け、両手で頬杖をついて足をブラブラさせているアリシアがいた。


「ご飯が出来上がるのを待ってるの」


「作るのを手伝えよ」


「お料理苦手〜」


「仕留めた獲物を捌いてただろ」


「それは出来るけど、調理は出来ないの。食材を見てそれがどういった料理や調理法にすればいいとかはわかるんだけどね」


「それがわかって何故出来ない」


「不思議だね」


「まるで他人事だな。もういいよ、オイラ1人で作るから。それで何が食いたいんだ? 言っておくが凝った料理は作れないぞ?」


「とりあえず売る前に主の味を確認したいから、そのお肉で『焼く、蒸す、煮る』の3種類作って。お米は隅の箱に入れておいたから忘れずに炊いてね。私、お米大好きだから」


「オイラも米は好きだが……3種類か。うーん、何とか作るよ」


「頑張ってリコちゃん!」


「……ああ」


 リコッタは時間のかかる米から先にとりかかる。手際良く米を研ぎ、すぐに火を入れず浸水させ、その間に使う材料を出して行く。


「アリシア。肉はどこだ?」


「お肉は野菜とか入ってる冷蔵庫の隣りにある冷蔵庫に入ってるよ。切り分けて部位の名称も書いて貼ってあるから」


「何で冷蔵庫を分けてあるんだ?」


「そっちの冷蔵庫はお肉の鮮度を保つ為の温度設定にしてるの。臭い移りを避ける為でもあるけど」


「へぇ〜、そういうとこだけはシッカリしてるんだな……」


 微妙な感心をしつつ必要な部位を取り出していき、食材の準備が整ったところで調理を開始した。

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