コロッケ

 玲奈は、レイナの道具をアジトに置いてから帰宅した。

「ただいまー……」

 どうやら、楓はまだ帰っていないようだった。キッチンには料理をした後らしい洗い物が残っている。今晩はコロッケらしい。テーブルの玲奈の椅子の前には置手紙があって、「冷蔵庫の中にコロッケがあります。500Wで2分20秒がオススメ!」とある。

 玲奈は、なんだか食欲が湧かなくて、そのまま寝室に向かってしまった。


 翌朝、玲奈が目を覚ますと、部屋の外から音がした。出ていくと、楓がキッチンで洗い物をしているのだった。

「おはよう。朝ごはん、冷めちゃう前に食べてね」

 楓の様子はいつも通りだった。テーブルの上には、コロッケが用意されていた。

「昨日のことだけど……」

 玲奈は尋ねてみたが、楓は無言だった。

「あの男。誰だったの?」

 楓は返事をしなかった。

「何があったの?何をされたの?」

 玲奈は思わず楓の肩に掴みかかった。

「痛っ……!」

 そういえば、楓は肩を撃たれたのだった。

「……ごめん」

「知らない」

「……?」

「一つ目の質問の答え。あの男が誰だったのか、私は知らない。花牟礼紋って名前しか知らない」

 楓は洗い物がひと段落したようで、手を拭きながら続けた。

「二つ目。……長くなるから、座って話そうか」

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