第37巻(翌朝。「霊って)

 翌朝。「霊って、なんなん?」

ってママたちに聞いてみた。

「時空を超えた、誰かの想いとか...」

「その土地を愛していた人の、その気持ちだとか...そういうものの残像とかなのかしら...」

「だから、ミクちゃんの部屋の霊なら、昔、その場所にいた人の、その場所を愛している気持ちだとか...」

「それで、その場所を守ろうって思ってくれてる気持ちのようなものだったりだとか...」

「へぇー!でも、なんとなく、優しくて、あたたかな感じするから、やっぱり、この土地を愛している人の気持ちなのかもね~」



 ある日曜日、みんなでお昼ごはんを食べていた。

 そしたら、家の近くをたまたま通りかかったお姉さんが家に来た。

「あの~...」

って、そのお姉さんは言っていたので

「なんでしょうか?」

ってママたちは、そのお姉さんに聞いていた。

「わたしは、けっこう自分で霊感を持ってると思ってるのですけど...」

って、お姉さんは話しはじめた。

「はい?」

ってママたちも聞いている。


「こんなに強力な霊の存在を感じた家は、今までありません...」

って言っている。

「えっ?強力な霊?...ですか?」

「あっ、はい!とても強力な霊の存在を、こちらの家から感じましたので...」


「どういった霊なのでしょう?」

「家全体は、大きな力で守られています...」

「大きな力で?」

「はい!この場所に存在している大きな霊に守られている感じです...」

「えーっ?そうなんですか...」


「それから、お2階からは、なんとなく、歌を読まれている方の霊を感じます...」

「歌を読まれている方の?」

「ええ!昔の時代の歌人のお方でしょうかね...」

「えーっ?どなたなんでしょうかね~?」

「ちょっと、そこまでは、わかりませんけども...」

って言って、そのお姉さんは帰っていった。

「いきなり失礼いたしました...」

って言って...


「いえいえ...わざわざ、ありがとうございました...」

って、ママたちは、そのお姉さんにお礼を言っていた。


ママ2人は、びっくりして顔を見合わせていた。

「でも、なんとなく、そんな感じはしてるわね~」

「そうなのよね~」

って話をしている。


 わたしは、ミコに

「うわーっ!やっぱり、お歌を歌っている人、いるみたいだね~!」

って言ってみた。

「そうだよー!いるよー!お着物を着ているよー!」

「えーっ?ミコ、そんなのわかるのー?」

「めっちゃ可愛い人だよー」

「えーっ?そうなのー?」

「いつも、みんなのこと、じーっと優しく見ている...」



 「ミコのお部屋にも、だれかいるの?」

ってミコに聞いてみた。


 「うんっ、いるよー」


 「ミコのお部屋の人は、どんな人なのー?」

 「えっとね〜、勉強してるよ」


 「え?お勉強してるの?」

 「そうだよー」


 「なんのお勉強ー?」

 「いろいろだよー」


 「いろいろお勉強してるのねー」

 「そうみたいだよー」


 「女の子?」

 「そうだよ〜。うちと同じくらいの可愛い女の子」


 「へぇ~、じゃ、ミコちゃんも、怖くないんだね」

 「うんっ、怖くないよ。優しいよ。あやめっちの部屋の女の子とも仲良しみたい」


 「え?わたしの部屋にいる子とも仲良しなの?」

 「そうみたい。だから、うちの部屋にも、ミクっちの部屋の子、遊びに来るんだよ」



 キンモク小学校でも、わたし、お友達いっぱいいるよ。

 みんなに、わたしの部屋にいる女の子の話をしても、別にそれほど不思議がらない。

 キンモク星では、結構あたりまえのことなのかも。


 いちばん仲良しの、アルマちゃんに、わたしのお部屋に来てもらった。

 

 「うわっ、ミクちゃんのお部屋には、可愛い着物の女の子いるねー」

って言ってる。


 「わかるの?」

 「わかるよー!なんで、ミクちゃんは、わからないの?」


 「えーっ、そんなの、わたしには見えないんだよー!」

 「なんでかなー?まあ、キンモク育ちじゃないからね〜」


 「ミコには、わかるらしいんだけど」

 「ミコちゃんには見えてるのかー」


 「アルマちゃんの部屋にも、だれかいるの?」

 「いるよー」


 「どんな子?」

 「お料理やってる子だよー」


 「なんじゃそりゃ〜」

 「こらーっ、なに言ってんのー!お料理やってる可愛い女の子なんだよー」


 「そっかー!いいねー」

 「そうでしょ〜。お料理は出してくれないけど」


 「な〜んだ。お料理は出してくれないのか」

 「な〜んだじゃないよー!ミクちゃん、まだまだだね〜」


 「なんで?まだまだなの?」

 「そうだよ〜、ミクちゃん、キンモクっ子になるには、まだまだだね〜」



 「じゃあ、アルマちゃんのお部屋に行きたいな〜」

 「いいよ〜」


 アルマちゃんのお部屋に入ったら、たしかにやっぱり、なんだか良い香りしてくるのをわたしも感じる。

 「なんか、アルマちゃんのお部屋、めっちゃ美味しそうな匂いしてるね〜」

 「おっ、ミクちゃんにも、わかるのか!」


 「うんっ、いいな〜。アルマちゃんのお部屋は、お料理好きな女の子で」

 「あはは...うちもお料理好きだしねっ」


 「仲良くやってるってことか!」

 「おっ、ミクちゃんもわかってきたねー!仲良くやること!それ、いちばん大事なんだよっ」


 「仲良く共存ってこと?」

 「そう!まさに、それなっ!」

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