第31話

翼さんに連れられて事務所に入れてもらった。


「さあ、どうぞ」


スタジオに案内された。そこには、モデルさんたちとカメラマンさんがいる。


「藤原くん、私の担当モデルを連れてきて」


「はい」


きのこ頭の藤原さんは指図されてるし。やっぱり怖いかも。そんで、藤原さんはすぐにモデルさんを何人か連れてきた。


「翼さん、連れてきました。じゃあ1人ずつ紹介を」


「はーい!多賀芽衣たがめいだよ?よろしくねー?ほのかちゃん」


この方はツインテールで、黒髪で毛先がくるくるしてる。これは、どうやってできてるんだろ?


萩原雪菜はぎわらゆきなです」


こちらはスマートでお姉さんって感じ。清楚な黒髪。


「あら?髪の毛切ったんだね」


「あ、そうです…」


早速会話しちゃったよ。


「私は18なの。たぶん同じくらいよね?よろしく」


「あ、はい。よろしくお願いします」


年齢近いのにこの落ち着き。すごいな。


「芽衣のことは、めーさんって呼んでいいからね?」


「え、いや、そんないきなりは呼べないです…」


「ほのかちゃん、この人いつもバカなことばっかり言う人だから、スルーしていい」


「えーひどいよーゆきなちゃん」


「普通にめいさんか多賀さんって呼んだら?」


「はい」


「えー!めーさんがいいのに!」


「そんなの誰も呼んでないじゃないですか」


なんとクールなんだろう。ちょっとめいさんが可哀想に思えた。


「じゃあ、小暮さんのところに行きましょうか」


会話途中に藤原さんが入る。まだいたのか。翼さんはいつのまにかいないし。


「あ…小暮さんって例の?」


「そういうの話しちゃだめです」


「もちろんですって!」


少し歩いたところには撮影中のモデルさんが。あ!あの人知ってる。金髪の、外国人でモデルのジャムさん!


「あの、小暮さん。新しいモデル連れてきました」


「は?ちょいまって」


撮影はまだ続けている。


「よっしゃ、ジャムちゃんOK!」


「はーい!」


とても元気にジャムさんは声を出した。なんてかわいらしいの。そして私に向かってくるではないか。


「はじめまして!ほのかちゃんだよね!」


「は、はい!ど、どうも」


「髪型かわいいね?」


そして、遅れてやってきたのは、さっきまで撮影していた小暮さんだ。釣り目がちな目と茶髪にピアス。そんで、チャラいチビである。


「あー、俺は小暮こぐれ。よろしくね、ほのかちゃん」


「私はジャムだよ。あ、美空ジャムって言います」


「え、美空?ハーフなんですか?」


「そーなの」


知らなかった。だって、Jamで活動してるし。てゆーか日本語普通にしゃべってるし。


「ねえ、ほのかちゃん、黒髪やめちゃったの?すごい意気込みだねー」


小暮さんも私の昔の髪型知ってんのか。


「これは…マネージャーに言われて」


「まじ?てかマネージャーとかいたのかよ。すげーな」


「そうですか?」


小暮さんチャラいから気を付けなくては。


「おい、藤原。他のモデル達連れてこいよ。まだ紹介してないんだろ?」


「はい」


藤原さんはここでもぱしりなんだな。


「ごめんねー?俺の担当してるモデル達、今休憩しててさー」


「あ、はい」


「じゃあージャムも休憩に行きまーす」


「どーぞ、で?ほのかちゃんはさー」


助けてくれ。この人と居たくなーい!


「小暮さん、連れてきましたよ」


「おい、早いよ」


理不尽。藤原さんが可哀想!モデルさんたちが私のもとへやってきた。


「あなたがほのかさん?髪の毛切っちゃったのね」


「はい、そうです…」


前の私の写真見てくれてるのか。なんかイメージ変わってすいません。


「私、下津由良しもつゆら。よろしくね」


なんともおしとやかなお姉さん。いまどきって感じでゆる巻きで茶髪。


「私は、雨飾あまかざりクレアです。よろしくお願いします」


こちらの方は、昔の私の髪型と同じでびっくり。茶髪で、ハーフっぽい。


「私、まだ新人なんです」


「え、そうなんですか!?」


よかった…私と一緒だ。


「そうなの!よろしくね!仲良くしましょう!」


げ、急にうるさい。そんで、腕を掴まれぶんぶんされた。なんなんだ。


「どーーも!ほのかさん!萩原はぎわらです!」


え、他のモデルさん差し置いての紹介。この男の人が例の人か。クレアさんは名残惜しそうに、私の手を離してくれた。


「カメラマンしてます。おいしいご飯の食べられる店なら、いくらでもご紹介しますよ」


「おい、なんで萩原まで来たんだ」


「だって、呼ばれましたから」


小暮さんと口論になってしまった。


「まずは、モデルさんから紹介すんのが普通だし。どうなってんだよお前は」


「でも小暮さんは自己紹介したんでしょ?おかしくないですか?それ」


「俺はここにいたから紹介しただけだし」


うわ、めんどくさい男たち。

他のモデルさんとは、この面倒な人たちを無視して挨拶した。あと、他のアシスタントさんにも挨拶しといた。

そんなときに、翼さんがやってきた。


「皆さん、紹介は終わりましたか?」


「あ、翼さん」


萩原さんも、小暮さんもけんかを辞めた。翼さんの一声にいち早く声を上げたのは萩原さんである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る