第32話

「萩原くん。私は忙しいので、ほのかさんを君の担当にしてもらえますか?」


「え!もちろんです。ありがとうございます」


え、いきなりカメラマン交代とか。なんでですか。


「ほのかさん、改めまして!どうぞよろしくお願いします。ちなみに私、フリーです。フリーというのは、彼女がいないということです」


「おい、萩原変なこというなよ。で?ほのかちゃんはフリーなの?」


えー、小暮さんまで。この人たちほんとだめだ。


「そう、ですけど…」


「その話はさておき、まだここにいないカメラマンがいます」

 

翼さんが話を止めてくれた。助かります。


「そーですね!長山ながやまさん忘れてました。呼んで…あ、翼さん!廊下にいます!あ、こっちに!」


萩原さんが無駄に騒いでいるけど、なんなんだろ。


「ああ、長山さん、ちょうどよかった」


スタジオに入って来たのは、はげたおじさん。この人もカメラマンなのか?なんか、すごい小さい。小暮さんはチビだけど、このおじさんの方がもっとチビ。


「こちら、長山さん」


え、なんで翼さんが紹介…?


「長山さん、彼女を変な目で見ないで下さいね」


「見ていない」


「独身だからそう見えました」


うえ、この2人は微妙な関係なのか…。ちなみに翼さんには指輪があったので、結婚しているんだろう。私はまだ指輪もらってないけど。


「さて、ほのかさん。次はメイク室に行くといいですよ。ここを出てすぐなので」


「は、はい!」


「では皆さん、仕事に戻って下さい」


うわー翼さんボス的な。そんで、私は1人でメイク室へ。

ノックすると、はーいと優しい声が。

と、勝手にドアが開いた。


「あらぁ。ほのかちゃん?」


2つに髪を結んでいて、ばっちりメイクな小柄な方が現れた。


「そうです」


「入って入って!さ!」


中に誘導された。メイク室はたくさんの鏡が。


「ほら見て!ほのかちゃん来たよ!」


「おー!」


この部屋には何人か人がいた。当たり前か。


「それじゃあ早速自己紹介しよう。私はメイクの田中。で、こっちが餅月もちづき。メイクさんよー」


「どーもどーも、よろしくぅー」


ポニーテールでこちらもばっちりメイク。誰かの髪の毛をセットしている。


「んで、スタイリストの旭川あさひかわさん」


「よろしく」


おお、いけてる男性がこんなとこに。長髪ロン毛でモデルみたいに脚長い!


「そんでー、今メイクしてるはモデルのまなちゃん!」


「あー私その子と昨日会ってまーす」


真奈さんこんなとこに居たのか。ぺこりとご挨拶した。


「そうなの?じゃ、あとはー、眠りながら髪セットしてもらってる白河しらかわさおりさん」


「え?あの有名な?」


「そーよ?」


寝ててわからなかった。いつもは黒髪サラサラヘアーだけど、髪の毛にはカーラーが。


「白河さん、新しい子が来ました!」


髪の毛をセットしていた餅月さんが、白河さんの肩を揺らす。なんかすみません。


「ん?どこ?」


あー、起きちゃったよ。白河さんは後ろを振り返った。あ、目が合った!


「あー、ども。白河です」


「はじめまして…」


イメージ違う。写真だと、もっとかわいらしい人かと。


「お菓子好き?」


「え?は、はい」


「その辺の食べていいよ」


「ありがとう、ございます」


「私も食べる」


いきなり机にあったお菓子を食べ始めた白河さん。マイペースなのか?


「ま、まぁ、挨拶できてよかったね、ほのかちゃん」


白河さんに困っていたところ、田中さんがフォローしてくれた。


「は、はい」


「あとは食事とか担当してる人いるけど、今忙しいからまた今度行くといいわ」


「どうも」


すると、トントンとノックの音がして、藤原さんが入ってきた。


「失礼します。ほのかさん終わりましたか?」


「はい」


「萩原さんの所へ行きましょう」


「えー?萩原が担当なの?」


田中さんが微妙な顔に。やっぱまずい人なの?


「そうなんです。翼さんが忙しいそうで」


「残念ね。萩原とか最悪な性格だから、何を言われても適当に流すといいわよ」


え、田中さんアドバイスなの?それ?

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