#20 2月の服
この文章を書いているのは、7月の頭である。
梅雨は知らないうちに形を失って、体の準備ができないままに気温が上がっていく日々を過ごしている。
友人が僕にスマホを差し出した。見てほしい動画があるらしい。その動画は、彼が今年の2月に撮影したものだった。音楽スタジオでのリハーサルの動画、8分もある長いオリジナル曲の動画だった。
動画に映る人物は2月の服を着ている。当然だ、2月に撮影したのだから。グレーのコート、7月には見なくなるグレーのコート。私の誕生月である2月には、7月には見なくなるグレーのコートを着ている人がいるのだ。
7月に2月の服を見ると、どこか羨ましく思えた。私も2月には登山ブランドのカーキのダウンジャケットを着ている。誰しも条件は同じ。7月にはコートもダウンジャケットも着ない。着ていたら、頭がおかしい。
なるほど。地球や宇宙は、そうやって季節のある国の人々を生きながらえさせてきたんだね。最近は、満ち引きや波動や揺らぎ、周期のことを考え、感じることが多いから、人々の服装が周期を持っていることに敏感になっていたらしい。
「また、あの季節がやってくるんだなぁ。楽しみだ。」と思えた。
可愛いあの子は、お気に入りのニット帽を手に入れて、カポッと頭に被せるだろうね。私は、次の2月、何を身に纏おうかな。
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