第36話 【喪失】
万九郎は、国立大学で教官として働いている間に、ベアトリーチェから、知らせを受けました。
「セレスが治癒能力に目覚めたわ。もう何か凄くて、今は佐世保の総合病院で働いている」
セレスが自活できるならと、万九郎はますます、ソロでの活動に、励むようになりました。
############################
「セレスが大変です。すぐに帰ってください」
ベアトリーチェから、そんな知らせが、届きました。
############################
「セレス!」
「セレスは、意識がないわ」
ベアトリーチェが、感情を持つことができないような声で、言いました。
「何が、あったんだ?」
「いつの間にか、こうなってたの。何の兆候も、なくて・・」
ベアトリーチェが、とうとう、泣き出してしまいました。
############################
佐世保の中央病院の医者たちに診てもらっても、
「どうしたらいいのか、分かりません」
九大の偉いお医者様たちに、あえて診てもらっても、よく分からない説明をするだけで、病状は少しも、良くなりませんでした。
それどころが、急速に悪化していきました。
心臓は普通に、拍動しているのですが、セレスの身体が、存在自体が、手足の末節の方から、どんどん消えて行っています。
「ベアトリーチェは精霊エルフだろ。何か知らないのか?」
「精霊王なら、なんとか」
「なら、俺が精霊王を連れてきてやる。どこにいるんだ?」
「いないわ」
「いない?」
「私とセレスは精霊エルフ。それだけで、たぶん神に近い存在なのよ!」
############################
3日後、佐世保の中央病院の病室で、セレスは、消滅しました。
最後まで、意識は戻りませんでした。
############################
たくさんの人が、お悔やみで来てくれましたが、ベアトリーチェが何とか対応するだけでした。
万九郎は、佐世保から、いなくなっていました。
############################
少し前に住んでいた、浦ノ崎の一軒家に、万九郎は、誰にも行き先を告げずに、ひっそりと住んでいました。
万九郎は、何もしませんでした。
############################
それから、1年以上が流れた、ある日。
これで、「佐世保から愛を込めて」の前半は終了です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます