第36話 【喪失】

万九郎は、国立大学で教官として働いている間に、ベアトリーチェから、知らせを受けました。


「セレスが治癒能力に目覚めたわ。もう何か凄くて、今は佐世保の総合病院で働いている」


セレスが自活できるならと、万九郎はますます、ソロでの活動に、励むようになりました。


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「セレスが大変です。すぐに帰ってください」


ベアトリーチェから、そんな知らせが、届きました。


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「セレス!」


「セレスは、意識がないわ」


ベアトリーチェが、感情を持つことができないような声で、言いました。


「何が、あったんだ?」


「いつの間にか、こうなってたの。何の兆候も、なくて・・」


ベアトリーチェが、とうとう、泣き出してしまいました。


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佐世保の中央病院の医者たちに診てもらっても、


「どうしたらいいのか、分かりません」


九大の偉いお医者様たちに、あえて診てもらっても、よく分からない説明をするだけで、病状は少しも、良くなりませんでした。


それどころが、急速に悪化していきました。


心臓は普通に、拍動しているのですが、セレスの身体が、存在自体が、手足の末節の方から、どんどん消えて行っています。


「ベアトリーチェは精霊エルフだろ。何か知らないのか?」


「精霊王なら、なんとか」


「なら、俺が精霊王を連れてきてやる。どこにいるんだ?」


「いないわ」


「いない?」


「私とセレスは精霊エルフ。それだけで、たぶん神に近い存在なのよ!」


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3日後、佐世保の中央病院の病室で、セレスは、消滅しました。

最後まで、意識は戻りませんでした。


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たくさんの人が、お悔やみで来てくれましたが、ベアトリーチェが何とか対応するだけでした。


万九郎は、佐世保から、いなくなっていました。


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少し前に住んでいた、浦ノ崎の一軒家に、万九郎は、誰にも行き先を告げずに、ひっそりと住んでいました。


万九郎は、何もしませんでした。


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それから、1年以上が流れた、ある日。



これで、「佐世保から愛を込めて」の前半は終了です。




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