第34話 【松浦領】

次の日、万九郎は坂口さんと一緒に、自動車教習所にやって来ました。


自動車教習所と言うと普通は、一応、学校らしい見た目かどうかはともかく、それっぽい建物があって、比較的近くに、実際に車やバイクに乗って練習するための、楕円形の専用道路があります。


「ここが、教習所だよ」


そう言って、万九郎が指さしたのは、どう見ても駅の改札でした。


「正確には、ここは入口兼出口だな」


坂口さんが、唖然としています。


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その改札らしきものを通ると、オジさんが1人いました。

この人が先生です。


松浦領の自動車教習所では、「教官」とは言いません。

公務員ではないからです。


その人に坂口さんは、例の薄い教科書を1冊貰い、口頭で注意点などの授業を受けました。


5分で終わりました。

無料です。


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そのあと、すぐに専用道路まで移動し、その人が助手席、万九郎は後部座席に座って、運転の実習が始まりました。


坂口さんは、運動能力、動体視力など、運転に求められる能力を十分過ぎるほど備えているため、2時間ほどで実習は、終わりになりました。


「さすが坂口さんだ。さっそく外の道路に出るけど、どの車がいい?」


「自動車のことは詳しくありませんので、お任せします」


トヨタのカローラに、乗ることになりました。


「こんなにサッサと進むなんて、正直、びっくりしています」


「坂口さんの能力もあるけど、無駄を省けば、こんなものだよ」


松浦領の人たちは、例外なくマジメで、頭がいいので、無駄に授業をする必要がないのです。


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教習所から外に出て、しばらく車を走らせていると、坂口さんは気付きました。


対向車が全くいない、広くて、凄いスピードで走らせられる、まるでアウトバーンのような道路を、しばらく走っていると、だんだんと対向車の数が増えていきます。


そしてとうとう、どこかの大都市の混雑した道路に、今はいます。


信号機はもちろん、たくさんの、色んな髪の色の人々が、歩いています。


電車も、走っていました。


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そして、翌日の昼頃には、すべての教習と試験を修了して、坂口さんは、自動車の普通免許を取得しました。


すでに顔写真は貼付してある、日本の正式な運転免許証です。


「夢みたい・・」


「せっかく教習所に来たんだから、ほかに取りたい免許とか、ないか?」


万九郎が聞くと、


「バイクの免許を取って、限定解除したいです。佳菜様が、バイクがお好きらしいので、自分もいつかは乗ってみたいと、思っていたんです」


普段は口数の少ない坂口さんが、積極的に喋っています。


良いことです


そして、その2日後には、大型バイクの免許も、取得しました。


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その翌日、万九郎は坂口さんを、別の場所に連れて行きました。


「たぶん、面白いと思う」


そこも昨日の自動車教習所と同様、駅の改札のようなものが、ありました。


ただ、教習所は坂口さん1人でしたが、こちらは10人以上、利用者がいるようです。


「週末だからな。皆んな、面白いところに行きたいのさ」


「面白いところ・・?」


「行ってみれば、分かる」


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例のごとく、改札のようなものを抜けると、妙に賑やかな街がありました。


「さて、買い物するも良し。海外旅行するのも良し。たまには、こっちでビジネスを始める人も、いるよ。ちなみに、物価は松浦領の1/10!」


坂口さんは、あまりのことに、言葉が出ません。


「じゃ、ここから福岡空港まで行って、どこか海外に行ってみよう」


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万九郎は当然、三菱パジェロをレンタルしました。


サクッと福岡空港まで行くと、


「どこか行きたい外国ある?」


と、坂口さんに聞きました。


「それなら、ぜひフランスに!」


「女の子らしいなあ。俺も、ヨーロッパ行ったことないし、フランス語喋れないから、興味ある。決定だな」


と、いうわけで、万九郎と坂口さんの2人は、フランスに行ったのです。


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フランスでは、なぜか万九郎がパリ大学の臨時教官になったり、坂口さんも同じ大学で、留学生として学んだりしました。


そのほかにも、色々なことがありましたが、とにかく1年が経ち、2人は帰国して、今は例の改札から出たところです。


「フランスに1年いたけど、こっちに帰れば、時間の経過は、無かったことになってるから」


また坂口さんは、あまりのことに、言葉が出ません。


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