第33話 【五島】


「どうなってんだ、こりゃ!」


万九郎は、叫んでいた。


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「五島は、初めてだな」


今回、五島に来たのは、松浦家の佐世保別邸にいた松浦佳菜からの要請によるものだ。


極めて大型の台風19号が、九州北部に近づいている。


そして、五島は、その直撃ルートにあった。


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五島には、九州商船株式会社のフェリーを使った。


五島の中心である福江市には行かず、台風が直撃する事が確実な小値賀に行った。


現地では、格安の賃貸アパートを借りている。


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台風の襲来は3日後と予想されている。


俺は、船釣りに行く事に決めた。


「おおい、マサさん」


「万九郎か、まだ午後7時だぞ。早すぎる」


マサさんの家は、代々船乗りだ。


その中でも、マサさんは別格に釣るのが上手い。


五島全体でも、たぶん一番上手いという評判だ。


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一緒に釣りに行く人たちが、集まってきた。


全部で5人。それぞれに、釣り師としての風格がある。


「良し。船出すぞー」


マサさんが、当たり前の事のように、言った。


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最初の30分は、平和そのものだった。


「凪ですねえ」


【凪】


凪(なぎ・英語: calm)は、風力0(風速0.0 - 0.2メートル毎秒)の状態をいう。

沿岸地域では、気圧傾度が弱く天気のよい日には日中に海風・夜中に陸風が吹く。海風から陸風へ切り替わるときの無風状態を「夕凪」(ゆうなぎ、英: evening calm)、陸風から海風へ切り替わるときの無風状態を「朝凪」(あさなぎ、英: morning calm)という。

そのほか、一般に風がおさまって波の穏やかな状態を「凪」(なぎ、英: calm)ともいい、時化の対義語として使われている。

なお、四方を山に囲まれ、風の弱い瀬戸内海のような内海ではこれの継続時間が長く、夏に近づくにつれてこれがはっきりと現れる。


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玄界灘どの辺なのか、俺には皆目分からない。


「どの辺に行ってるんですか?」


「平戸の方だよ」


「まあ、肩の力抜いとく方が、きっといいことあるぞ」


「ハッハッハ」


さすがベテラン。もの凄い余裕だ。


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「うわっ、ちょっ!」


海が、一変していた。


まだ8時過ぎなのに、空も真っ暗。まさに漆黒の闇だった。


波も、さっきまでとは全然違う!


「ドッパーン」


頭の上から、波が落ちてくる。落ちて来ていた。


「どうなってんだ、こりゃ!」


万九郎は、叫んでいた。


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「気分が、悪くなってきた」


「そりゃ船酔いだ。船室で寝てろ」


マサさんに、そう言われた俺は、言われた通りに、船室に入った」


中には、パイプ式の粗末なベッドがあった。


「これでも、ここの外よりマシだ」


仰向けに、寝転がった。


「ふぅ・・」


そして、俺はウトウトしていた。


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「おい。寝とる場合じゃなかぞ。早よ来い!」


「えっ」


信じられない。さっきまで、あんなに時化(シケ)てたのに。


それに、騒がしい。


「ハッハッハ!釣れる釣れる」


同じ船に乗ってるオッサンたちが、大喜びしてる。


「早よお前も釣れ。分け前無かごとなるぞ!」


方言丸出し。


だが、それがいい。


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今日は、よくある一本釣りの釣り竿ではなく、羊麻(ヨウマ)を、軽い木製の枠に巻き込んだものを使う。


【羊麻】

麻織物(あさおりもの)は、麻繊維でできた織物。麻布(まふ、あさふ、あさぬの)。硬くて強く天然の光沢がある。肌触りが涼しげ(シャリ感と呼ばれる)なため、主に夏の衣類に使われる。古くは紀元前のエジプトにおいてはミイラの製造の際にも使用された。紀元前から紙の起源である麻紙の原料となった。麻の衣服の材料となるのは、亜麻の繊維リネン、麻(大麻、狭義の麻)の繊維ヘンプ(en:hemp)、苧麻(からむし)の繊維ラミーである。麻(大麻)では乾きやすさと共に保温性もあり冬の素材としても用いられる。

麻(ヘンプ)と苧麻(ラミー)は日本では古くから重宝され、共に含めて麻織物と呼ばれ、一般大衆だけでなく、とりわけ神道で重要な麻衣の麁服/荒妙(あらたえ)も古くから調進されており、平安時代の『延喜式』(10世紀)にも記載され、麻織物の縫製技術は江戸時代には最も技術が高まり、上質なものは上布と呼ばれ幕府への献上品ともなった。明治時代には欧米文化の流入と共に需要は減少し、それでも昭和時代の中ごろまではその生産を生業とすることも続いた[1]。1980年代以降には、技術保存会などが発足。21世紀となり注目が集まる。

リネンは、中近東、ソ連で重宝されてきた。日本でも洋装に使われる繊維としてリネンが普及した。


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俺も、さっそく始めた。


すると、凄い引きがある。何だが、嬉しい。


1本の羊麻に、何匹ものイカが、かかっている。


イカの数え方には、ほかに「杯」が用いられるが、あれは居酒屋など、料理方面の用語である。



俺たちは朝まで、文字通り、釣って釣って、釣りまくった。


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そして、台風19号が、いよいよやって来た。


「海上自衛隊の小此木だ。我々も、独自に作戦を展開する。敵はシーサーペントと聞いた。水属性のドラゴンということで、最新型魚雷を最新鋭の潜水艦『白鯨』から連発する」


海自は、そう来るか。


俺は、ひざびさに飛翔魔法を使って、生月の近海まで行った。


上空で停止。

さっきから、身体が浮いた状態を、保っている。


真っ黒な海中から、海竜のドス黒い、巨大な気配が、急速に近づいている。

大きさは、全長20m以上。


デカい。


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結界を、張ってるのか。


まさにナノ単位の、極端に薄い皮膜。


「ならば」


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「射(テ)ぇ!」


白鯨から、魚雷が発射された。全部で6発。

このままでは、結界に弾かれてしまう。


「よし」


「結界よ、弾けろ!ル・デーレ(Ludere)」



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「ん?」


夜明けか。何か、長いような短いような、ありがちな感想を、つい口から漏らした。


結界が消滅した後は、自衛隊の最新鋭魚雷が。シーサーペントに深々と突き刺さった。


今回は海上自衛隊の、手柄である。


「それにしても、寒い」


俺は、五島までテレポートで帰った。



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まだ昼だというのに、オッサンもおばさんも、綺麗なお姉さんも、焼酎を飲んで多騒ぎしている。


「また、世話になったな」


「いえ。今回、敵にトドメを指したのは自衛隊です。自衛隊の手柄です」


「フフっ」


小此木3佐も、まんざらでも、なさそうだ。



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刺し身、天ぷら、フライ、スルメ。一夜干し。


イカは、何でも。どうやっても旨い。


万九郎も楽しくなり、遠慮なく騒ぎに参加した。



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「うわっ、何だよ?」


「よくやったわ」

「佐世保のみんなも、大喜びよ」


松浦佳菜様、シャル、それに佐世保の総合病院の精神科看護婦の皆んなにも、今回の収穫は「まとまった量」配布された。


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え?エロの無い話も書けるんですか?マジ?





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