第30話【二位田原1佐】

【二位田原1佐】



「何だって!?今、何と言った?」


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今回は、かなり過去の話から始まります。


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この時、俺は9歳。


俺は、地元の佐世保で、とある剣道の道場に通っている。


自分で言うのも何だか、身体ができていないのに、俺は強かった。


師範代と師範には、さすがにまだ勝てなかったが。



俺は、正直、退屈していた。


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海上自衛隊の、お偉いさんが来るそうだ。


まぁ俺には、関係ないけどな。


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「何だ、あれは!?」


私は、驚いた。


これほどの才能が存在しても、いいのか!?


身体強化しか、やってはいない。


まだまだ荒削りだ。


だが、この子には、魔導の凄まじい、秘められた才能がある。


二位田原由美は即、その男児を養子として、引き取ることに決めた。



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佐世保北高に入ると、俺は部活などには目もくれず、地元の海上自衛隊の基地、そして米


国の佐世保海軍基地に、出入りするようになった。


当然だが、高校では友達も彼女も、できなかった。


「別に、構わない」


俺は、そう思っていた。


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両親からの無視、育児怠慢は、いよいよ酷くなり、もう家に来なくなった。どちらも。


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''Hey, how are you doing?''


''Just leave me alone. ''



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つっけんどんな態度を取っていたが、俺は彼らに、不思議と嫌われなかった。


手品のフリをして見せていた魔法が、意外と受けが良かったのかもしれない。


''You saw that!? Unbeliebable!I've' nevwer seen anything that's so awsome!''


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「君が万(ヨロズ)万九郎君か。私は3佐の小此木だ。噂は聞いている。剣の腕も、魔術も、凄まじいそうじゃないか!」


「ありがとうございます」



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俺は、関東の国立大学に受かって、一人暮らしをするようになった。


この時期には、両親は完全に消えていたから、別に何も思わなかった。



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「うわ。万九郎、情報処理の評価S?」


そんなに大変な事か?



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アパートにすぐ転居し、バイトを始めるようになった。



スナック「とんちんかん」。


ママもチーママも、店員は全員、オカマだった。


不思議と、良くしてくれた。


「ほら、今月のお給料。24万入れといたわよ」



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「ん?万九郎は、魔法もできるのか?」


「ええ。何かもう、もの凄い腕ですよ。絶対、世界一ですね」



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それがどこだったのか、もう忘れた。


ただ、悲しい悲しい、冷たい怜悧な雪だけが、吹雪いていた。



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「二位1佐!」


1佐が、崖から落ちたのだ。


間一髪、俺の右手で、1佐のどちらの手だったかは覚えていないが、手首をしっかりと掴んだ。掴む事が、できた。



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冷たい。とても、冷たい。


なんとか掴む事ができた1佐の手は、とても白くて、とても小さくて、細くて、綺麗で、白くて、繊細な1佐の指が、とても冷たかった。氷のように冷たかった事は、今でも覚えている。



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それは、寒い夕方だった。遠(トウ)に日は、沈んでいた。


「ハァ!」


「二位1佐。今の技は、何ですか?」


「雷魔法、テスラ(Tesla)だ」


凄い。もの凄いなんて、生やさしい物じゃない。

俺も魔法には自信があるが、正直、勝てないかもしれない。


江戸時代に松本藩のお抱え道場の師範、師範代を代々、努めていた家系と聞いた。



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「フン」


「何者だ、お前。魔王四天王が一人、ベルセーブブを相手に、ここまで戦えるとは!」


その程度で四天王か。魔王も多寡(タカ)が知れる。



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私はその時、勝利を確信していた。


「テスラ!」


決まった!絶対、殺した。



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もの凄い衝撃を、心臓を中心に、身体全体で受けていた。


何?


「フハハハ!どうやら知らなかったようだな。俺は、雷属性が得意なのだ。そしてテスラは」


なんという事だ!相手の得手不得手も知らずに、戦いを挑むとは。二位田原由美、一生の不覚。


万九郎・・。



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知らせを聞いた俺は、絶望していた。


何日も、何十日も、何百日も、何をすればいいのか、自分が分からなかった。


ただ、知っていることが1つ、

俺は、彼女を、二位田原由美を愛していた。


それだけだ。





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