第43話 「?」

 そもそも、どうしてこの洞窟が危険なはずだと思ったんだっけ。

 天文学者の残したメモに、洞窟内は「?」マークが付いていたからだ。中がどうなっているか分からないってこと。

 けど、実際には危険なんてなかった。

 それなら、もっと以前に誰かがこの洞窟を調査していたっていいはずだ。でも、調査はされていなかった。……きっとモンスター達がいたから。薄暗い場所が好きな奴が多いから、大抵どんな洞窟にも何らかのモンスターがいるものだ。

 けど、ここには何もいなかった。

 ――

 そう考え付いて、ぞっとする。

 はっと思いついて、天上を見上げる。

 天上に開いた大きな穴。何者かが開けたのではないか? 正規に入口を通れない程の大きな何者かが、洞窟内に侵入するために。

 冷汗が伝う。

 そういえば、この広場の岩壁はあちこち崩れていて、大きな岩が転がっている。こんな大きな空間が元からあったのだろうか。松明の灯りが届く壁面を見ると、大きな爪痕が見えた。

 何者かが、ここに充分な広さのある空間を作った。――獲物を待ち構えるために、自身の居心地のいい空間を。

「……ねえ、ドゥーク……」

 小声で呼ぶ。

 けれど、返事はない。ドゥークは広場の端、松明の灯りも届かない漆黒の暗闇を睨みつけている。息を詰め、その手はすでに剣に掛けられている。

 ドゥークの視線を辿る。

 岩壁が動いた。そう思うくらい、その陰は巨大なものだった。

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