第42話 満天の星
しばらく進むと、不意に空気が変わった。ひんやりした洞窟内の空気に、
「出口かなっ」
自然と早足になる。
洞窟の突き当たりの岩場の陰に、小さな通路がある。僕は通れるけど、ドゥークは……なんとか通れた!
抜けると、頭上に星明かりが見えた。
洞窟の出口かと思ったが、そうじゃなかった。
まだ周囲は岩に囲まれている。てっぺんの部分だけ岩が落ちて大きな穴が開いているため、そこから外気が入ってくる。けど、とてもじゃないけど登れそうにない。ただ、広い空間に出ただけだ。洞窟を脱出するには、まだ先を行かねばならないようだ。
僕たちが出てきた場所のすぐ隣にも、岩の割れ目があり、奥は通路に続いていそうだ。
「イチハたちはこっちから出てくるかな」
「たぶんな」
足元の大きな岩に腰を下ろす。
暗い洞窟の中から見上げる夜空は、いつもよりもたくさんの星がくっきり見えるようだった。
「あっ、流れ星!」
以前、ドゥークとイチハに教えてもらった。流れ星が消える前に、三回願い事を唱えれば叶うんだって。さっきは間に合わなかったけど、ここで見上げていればまた見つけられそうだ。とはいえ、どんな願い事をしようかな……。
星々のお蔭で、先程までの通路と違って、少し周囲の様子が見える。徐々に闇に目も慣れてくる。
天上の穴から雨が落ちてくるためか、小さな泉がある。僅かながら草花も咲いている。けれど、他には何もなくてしんとしている。
「天文学者の人はいなかったね」
もしかしたら、中で出会うかもしれないと思っていたが、来た道にはいなかった。
「もっと先に進んだんだろう」
確かに、特段の危険もなかったから、どんどん先を急いだだろう。暗くてよく見えないけど、きっと他にも通路が隠れているはずだ。イチハたちが来る前に探しておこう。
……そう考えながら、ふと違和感が
順調すぎやしないか?
いや、順調でいいんだけれど。でも。
なぜ、一匹のモンスターにも出くわさなかったのか。僕らはもっと早く、その異常に気付くべきだった。
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