第34話 案内所
案内所では、星に関する情報は得られなかった。
情報がないわけではなくて、真偽不明の情報が溢れているためだ。
ライバルを蹴落とすために、嘘の情報を置いていく冒険者がいるらしい。
たとえば、ミノタ迷宮の地下に星の湧く泉があるという情報に、多くの冒険者達が現地へ向かった。けれど、そこはモンスターの巣窟で、奮闘虚しくたくさんの冒険者が犠牲となった。そうして迷宮内のモンスターがいなくなったところに、情報提供者がさっそうと現れて、そこにあった唯一の星をかっさらっていった。
「こいつですよ」
案内所の人が貼り紙を指す。「お尋ね者」として貼り出された人相画を見て、僕とミミは顔を見合わせた。懸賞金まで掛かっている。小柄でサルみたいな男、――昨日市場で遭遇したスリだ!
「どうした?」
ドゥークとイチハが尋ねる。けど、僕らは「なんでもない」と首を振る。だって二人に心配掛けたくないもの。
星の代わりに、僕らは天文台の情報を得た。
確かに、西の果てに天文台はあるけれど、すでに廃墟になっているという。
案内所公認の冒険者からの情報なので間違いありません、と案内所の人が言う。(真偽不明の情報を精査するために、案内所では現地調査する冒険者を雇っているらしい。)
人の住まない場所なので、周辺にはモンスターも多いらしい。
けど、僕らは天文台へ向かうことにした。天文台の館長は星の研究をしていたというから、何か手掛かりが残されているかもしれない。それに、天文台から少し行ったところには港があって、さまざまな人や物や情報が集まってくるという。市場も栄えているから、そこまで行けば寝食には困らない。
出発前に、僕らはギルドの登録をした。ドゥークとイチハとミミと僕。僕らがプレゼントしたペンで、ドゥークがさらさらと名前を書く。一枚の紙に四人の名前を並べて書くと、なんだかくすぐったい気がした。
「これで各地の案内所に私達の名前と目的地が登録されたわ。もしも迷子になったら案内所に集合するのよ」
イチハが冗談めかして言う。
けど、本当はミミのためだって、皆分かってる。ミミを探しているはずの騎士様が、ミミのことを見つけられるよう、案内所に来れば行き先が分かるようにしたんだ。
「じゃあ、行こうか」
案内所を出て、西へ向かって出発する。
もらった地図で天文台までの道のりは確認できる。でも、その周りの多くの場所は、どんな所か分からない白紙のままになっていた。
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