第14話『三人の男』
風雷の八月巣家の十三日——。
今日も今日とて生産修法の仕事のため、集まった100人からのメンバーを指揮するNWSリーダーたち。
集会所で作業するには手狭なため、外にオーニングを張って場所を確保している。
夏野菜を入れた段ボールが、断続的に里の西側の倉庫へ運ばれていく。
集配を受け持っていたのはマルクとタイラーだった。
「うわっ!」
メンバーの男性が台車から荷を落っことす。
「大丈夫か?」
近くにいたタイラーが駆け寄る。
「すみませんっ!」
焦る男性——20代前半といったところ――は、明らかにタイラーにビビっていた。
見ると、段ボールがひしゃげてしまっている。積み方もおかしい。
「これ積んだの、おまえか?」
「は、はいっ! ごめんなさい」
「んなビビるな、取って食いやしねぇよ。いいか、段ボールは目一杯詰めてあるわけじゃないから、壊れやすいんだよ。だから、冬瓜やスイカなんかの重量級は一番下に。トウモロコシやゴーヤーなんかの中くらいは中間に。トマトやナス、キュウリ……小型のもんは上に積むようにしねぇと、こんなふうに崩れちまうんだ。梱包材はあってないもんだと思わねぇとな」
「はい……」
「台車に積むときも……いいか教えてやる。下に3個置いたら、上に置くときは互い違いに配置を変えるんだよ。そうすると安定する。ほら、積み直すぞ」
「は、はいっ! お手数かけてすみません」
言葉は知ってても、ものは知らねぇんだな、とタイラーは苦笑した。
しかし、数少ない男性メンバー。大切にしなくては。
そう思い直して段ボールを積み直していると、助けが入った。
噴水広場にたむろしていた男性たちだった。
「悪いな」
一声かけると、ニヤリと笑ってこれに答える。
「いいってことよ、お互い様だからな」
程なく、段ボールは整然と高く積み上げられた。
「あ、ありがとうございます!」
恐縮する若者に声をかける男たち。
「暑い中大変だな」
「こういうのは慣れだ、慣れ」
「は、はいっ、失礼します」
ところが今度は台車が動かない。
「どうした?」
「車輪がおかしいんじゃないのか」
「どれ!」
原因を調べてみると、足で操作するロックが下りたままになっていた。
「なんのことはなかったな」
「よし、行ってこい!」
「はい、ありがとうございました」
若者は両手で取っ手を掴み、ようやく運んでいった。
「助かったぜ、ありがとな」
タイラーが気軽に礼を言うと、男たちは豪快に笑った。
「いやいや、大変だな」
「野菜が腐っちまうよ」
「ああ、時間との戦いだ」
「そうか……男手足んないんだろ? 手伝おうか」
「おう、助かるぜ。頼むよ」
というわけで、三人の男性が加わって、夕方まで仕事を手伝ってくれた。
しかし、タイラーもマルクも、彼らが何という名前なのか知らなかったのである。
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