第11話『落ち着いてみると……』

「何が起こったか、説明できる人——?」

「いや、なにがなんだか」

 キーツの問いに、マルク、トゥーラ、アロンも首を傾げている。

「ランスさん、わかります?」

 アロンに聞かれたランスはおおよその考えを話した。

「たぶんなんですが――あのおもちゃが童話の里の場に触れて、溜め込まれた力が表に現れたんじゃないでしょうか」

「んな、節操のない魔法がありますかいな!」

 ポールが喚くと、マルクがなだめた。

「まぁ、落ち着けポール。俺たちが頼まれたのはおもちゃの浄化だ。原因を突き止めないと戻れないんだぞ」

「じゃあどうするのよ、この状況。肝心のおもちゃが悪さするんじゃ、洗うこともできないでしょうが」

「そうだよね……こっちもちょっとパニクったけど、おもちゃの情念何するものぞ、ってな感じで再トライしてみる?」

 キーツが言った途端、今度はパシッ、パシッというラップ音が木霊す。

「またかよ……」

 タイラーが結界の外を警戒しながら呟く。

「キーツが勇ましいこと言うからじゃないの?」

 ポールに非難されて、キーツがぶつくさ言う。

「んなこと言ったって、勇気出さないでどうするのさ」

 すると、隅の方で子どもの笑い声がした。そして辺りを飛び交うほどに大きくなっていく。

「——どうしたもんかな?」

 いつもの調子で言うマルクに、ポールが突っ込む。

「ちょっと、なんでそんなに呑気なわけ?」

 マルクはあっさり言った。

「あのな、ここは因果界だぜ? 思いや言霊が力を持つ世界だ。例えばこれがいっぱしのホラーだとして、起こることにいちいちビビってたら、ますます増長するんじゃないのか」

「あ……そうか」

「な」

「んで、どうすんの?」

 キーツが聞いたが、マルクやランスたちは顔を見合わせるばかりだった。

 ふと、タイラーが気づいた。

「——こういう時に一番パニックになりそうなナタルが落ち着いてるな」

「そう言えばそうね。どうしてナタル?」

 オリーブが聞くと、ナタルは言った。

「あ、いや、幽霊は聞いてもらいたいことがあって騒ぐけど、こっちが思いを汲んでやれば解決することが多いから……」

「ふーん」

 感心しているのか気がないのか、タイラーが呟いた。

「まぁ、今回は幽霊じゃないけどね」

 オリーブが言うと、ナタルがぽかんとして言った。

「幽霊だよ?」

「えっ、どこに?」

「結界の外を走り回ってるよ。足音も聞こえるでしょ」

 オリーブが結界の外を透視すると、はたしてそこはさながら子どもの遊び場だった。


















 

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