第11話『ナタルの説得』

「——この子たちって、水子の幽霊?」

 オリーブが聞くと、ナタルが言った。

「おそらくね。おもちゃはこの子たちのものだから、魂浄めで浄化するのを嫌がるのかも」

「ヘドロだらけなのにか?」

 タイラーの疑問にも明確に答えるナタル。

「それでも思い出の品には違いないんだよ。——この子たちにおもちゃをきれいにして返したら「光ある世界に還っておいで」って説得するんだ。それができたら納得するんじゃないかな」

「——なるほど」

「問題は誰が幽霊を説得するか、だな」

 マルクの言葉に、タイラーが即座に言った。

「ナタルが適任じゃねぇか? 一番状況を掴んでるからな」

「俺が……?」

「そうね、ポールは歯の根が合ってないから、お役には立ちそうもないわ」

 トゥーラが言って、ポールが無理に笑う。

「守備範囲外なもので」

「……うん、俺やってみるよ」

 こうして、幽霊を説得するために、ナタルが結界の外に出ることになった。

 光をローブのように上からすっぽりまとって、一歩結界の外に出ると、パンパンと手を二度叩いた。

「みんな、集まれ――!」

 子どもたちは青白く透ける幽体で、ナタルのところにふわーっと集まってきた。

「こんにちは、みんな。俺はナタル。一人の女の子のお父さんだよ」

「お父さん⁈」

 そう言うと、何人かの子どもがナタルの手に縋ってきた。

「光のお父さん、どうして光ってるの?」

「お父さんはね、光の下で仕事をして、大事な子どもを守るために光をいっぱい溜めておけるんだよ」

 子どもたちはめいめいキャーキャー言ってじゃれついた。

「ここにお父さんやお母さんからのプレゼントがあるね。みんな手に持ってごらん」

 すると、子どもたちは我先にと競って、おもちゃをケースから取り出してナタルに見せた。

「うん、とっても心がこもっているね。でも――みんなボロボロだ。よかったらお父さんに預けてくれないかな? 全部きれいに洗って治してあげる。そしたらみんな、光の世界に還ろうか」

 子どもたちは口々に言った。

「僕まだここにいたいんだよ」

「みんなと離れたくない」

「また一人ぼっちになっちゃう」

「お父さんもお母さんも迎えに来てくれないんだ」

「みんなと一緒がいい」

 ナタルはしゃがんで子どもの目線になって言った。

「だってみんな、こんなに冷たくなっちゃって……お父さんもお母さんも、みんなが光の世界に還ったって信じてるから迎えに来ないんだよ」

「ほんと? 光の世界に還ったら、お母さんに会える?」

「うん、約束する。君たちにはきっとお父さんやお母さんがわかるよ。みんなで会いに還ろう!」

「うん! 光のお父さん」














 

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