第11話『おもちゃがやってきた』
問題のおもちゃがやってきた。
ケース3箱分と意外に少ないが、凄まじい腐臭を放っている。
「うげ、すごい臭い!」
ポールは鼻をつまんで手をバタバタさせた。
「こーれは手強いよ。完全に放置されたヘドロの臭いだもん」
ナタルがハンカチを鼻と口に当てて言う。
「一応、洗ってはみたんだって。でも、油みたいに臭いがこびりついて取れないって言うのよね」
オリーブが申し訳なさそうに言う。
「えらいもんが来たな。どうするんだ、これを?」
タイラーが誰ともなしに聞くと、トゥーラが答えた。
「そうね……やっぱり何度も洗うのが適切じゃないかしら」
「この暑さにこの臭い。たまらんなー!」
ポールは鼻をつまんだまま変な声で言う。
「石鹼を使った水も浄化しなきゃですね」
ルイスがほとほと参ったように項垂れた。
「はい、粉石鹸」
ランスが早々と粉石鹼を持参し、マルク、タイラー、アロンがおもちゃの入ったケースを持ち上げた時だった。
全員を耳鳴りが襲った。
「うわーっ、なんだこりゃ!」
「耳いてぇ!」
「霊が騒いでる!」
「勘弁してくれよぉっ」
途端にブラックアウトする空間。
「ギャ―—ッ!!」
「なにこれ? 何が起こったの?」
「落ち着け! 全員火の精霊を呼べ」
タイラーの檄に慌てて反応するメンバー。
火の精霊が応えない。
パニックになる一同。
「どうして無反応なわけ⁈」
「やだ、変!」
「嘘だろ、どうなってるんだ」
「変なところに閉じ込められたんじゃないだろうな」
「ヤバい、絶対ヤバいって!」
すると、地面の一か所が突然明るくなって、広がって全員の姿をはっきり見せた。
「はぁー、よかった。ランスさんですか」
ルイスが膝に手を当ててホッとすると、ランスが言った。
「はい、光の精霊の半球結界です。皆さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないっ!!」
反射的に言ったのはポールである。
「おもちゃはどこ行った?」
「あそこです」
タイラーに答えて、ランスが指差した先。結界の外にぼんやりケースが見えている。
よく見れば、いつもの集会所の広間なのがわかる。
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