第9話『単なる一斉配信?』

「もしもーし、キーツ起きてる?」

 返事はすぐにあった。

「なんだポールか。早いじゃん、何か用?」

「今、なにしてたとこ?」

「なにって、どんぶり飯作ってるんだけど」

「ちょこっと耳貸してもらえる?」

「あと30分待ってよ」

「OK、30分後にまた連絡するよ」

 

 30分後、5時半――。

「実は今朝、変な夢見てさ。それが――生命の樹とレンナちゃんを透視したっぽいんだけど」

 ポールが切り出すと、キーツはあっさりこう言った。

「僕も見たよ。それ以上のことはなんにもできなかったけど」

「あ、そう……でも、これが初めてでしょ」

「そだね、こんなにくっきりはっきり見えたのは初めてかな」

「なんでそんなに落ち着いてんの?」

「だって、たいして意味があるとも思えないしね。あれ見て思わなかった? 単なる一斉配信みたいだって」

「一斉配信……!」

 明らかにがっかりしてポールが呟いた。

「それに、僕らだからレンナちゃんだってわかるくらい遠くからしか見えてないし。万世の秘法の関係者も、もし一斉配信だったとして、何人が判別できるかって話じゃないの。あの白い巨樹の正体はわかってもね」

「でもさ、ウェンデス統治者——人界の王と称される方でさえ、生命樹界は不可視の領域だったんじゃないの? それが末端の俺たちに見えるのは事件だよ、事件!」

「ああ、そうか。ポールはオーラが濁ってる状態だったからわからなかったかもしれないけど、僕もNWSのみんなもおぼろげには見えていたよ。判別できたのは今日だけど、なんの意味があるのかまではわかってなかったんだ」

「知らなかった――やっぱ気になるよ。説明できそうなやつ。おーい、マルク起きてる?」

 出し抜けにポールがマルクにテレパスを送る。

「ポールか? やけに早いな」

 怒りもせず対応するところをみると、もう今日の準備は終わっているらしい。

「悪い悪い。あのさ、今朝夢見なかった?」

「ああ、生命の樹と代表の夢だろ? はっきり見えたんで、夢人口が定数以上に達したんだろうと思ってた」

「なにそれ?」

「心理学でいうところの集合的無意識だよ。心の領域の根っこにある、人間すべてが共有してる領域。これが一定数に達したことで、夢の領域まで上ってきた、ということだよ。だから――万世の秘法に限らず、一般人でも見えただろうと思う。ただ、夢分析にかけたところで、木は生命力のシンボルで少女は偶像くらいの意味しか導けないだろうけどな」

「ほらな、キーツ。やっぱり深遠な意味が隠されてたじゃんか」

 ポールが責めると、キーツは反論した。

「でもさ、あーんな遠くからのぞいただけの夢に、なんの意味があるわけ?」

「意味はこれから持つんじゃないか? 最近、世界の大変革に向けて世界が一定方向に動き出しただろ。そのせいで集合的無意識が司る夢も、より意味のあるシンボライズされたものが意識に上ってきてるんだと思う」

「ちょっとマルク、集会所で話聞かせてよ。キーツ、手分けしてみんなに連絡しよう。新たな潮流に乗り遅れないようにしないと!」

 1時間後に童話の里の集会所に集合することにして、テレパスは打ち切られた。













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