第9話『夢、訪れる』

 夢を見ていた。

 そこでポールは、淡い橙色の光の空間に、天をつんざくような白い巨樹を遠くから眺めている。

 辺りは天地の区別がなく、巨樹の音が地面と思しきものの下に潜っているから、大地があるとわかるのだ。

 巨樹の根元に誰かいる。よく見覚えがあった。

 不思議な白い服を着ているがレンナだとわかる。

 声をかけようとしたが声が出ない。踏み出す足もない。

 どうやら夢の中で、この場所を透視しているらしい。

 もしかすると、ここは――ポールが思い至ったところで目が覚めた。


 真央界でポールが住むアパート、『クラウンプリンス』。

 その寝室でガバッと跳ね起きて、ポールは辺りを見渡した。

 東側の窓がほんのり明るい……時計を見ると3時30分だった。

 癖っ毛をわしゃわしゃと乱して、着ていたTシャツの襟首を引っ張った。

 異常なし。

 それを確かめてから、勢いよくベッドを飛び出し、朝シャワーを浴びる。

 さっぱりしてから着替えて、朝食の準備をした。

 ポットで湯を沸かし、コーヒ-を淹れた。

 パンは昨日仕込んだパン・オ・ショコラ。

 ここ最近マイブームの、生産修法で作った色とりどり野菜サラダ。

 ハムエッグと手作りヨーグルトも添えた朝食にありつく。

「さて、と」

 食べ終わって一息つくと、新聞を読む。

 カピトリヌスのブレア内戦鎮静化、というのが一面で、取り立てて自分の日常に影響はない。

 ローカル面も、海開きとか地方の新しい名産品の特集とか、至って平和である。

 代わり映えしないな、と思ったが、よくよく考えてみれば新聞は昨日のことを主に取り上げた内容で、今朝のことについて書かれているわけではない。

 それに――夢とあっては、真央界よりも因果界の領分だった。

 となると、近しい仲間を当たる以外、ポールの不可解な夢を説く手がかりはなさそうだった。

(今時間起きてるのは――)

 テレパスをキーツに繋げた。



















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