第8話『リーダー間で共有』
「いいなぁ、いいなぁ、羨ましいっ!」
ポールの第一声がこれだった。
十人全員揃ったところで、会議の趣旨をランスから説明を受けた、マルク、ポール、タイラーの三人。
「どんな人魚だったわけ?」
「そういえばトゥーラに似てたかな? ねぇ」
「おーっ」
キーツが言うと、ポールは目を輝かせた。
「あっちの方が色気100倍増しだったけど」
ナタルがぽっと顔を赤らめる。
「くーっ、会ってみたかった!」
「これからいくらでも機会はあるわよ」
小うるさそうにオリーブが言った。
「それで? 俺たちがそのことを他の里に発信するんだな。レポートの草案は?」
マルクが至って冷静に言うと、アロンが答えた。
「まだだ。ランスさんの話を総合すると、『里の本の現状と救済について』でいいと思うんだが」
「うんうん」
「童話の里の本に起こった異変について言及して、本の魔力が発動した経緯も説明するか。人魚の――エメラさんの言葉は抜き出しで。レンナちゃんやフローラ様の協力を取り付けた詳細と、里で執り行ってほしい活動は必須項目だな」
「うん。しかし、代表に頼むのにテレパスで済ますとは。そこのところ、どう説明するんだよ。しかも、生命の樹も一つ返事でOK、とかって……ありがたみが全然ないぞ」
マルクが冷や汗をかく。
「まぁ、面子が面子だからなぁ。ランスさんだってフォローしきれないよ」
苦笑するアロン。
それまで黙って聞いていたタイラーが言った。
「俺たちの考えが足りなかったのは認めるが……里に注意喚起するのに説得力に欠けるんじゃないか?」
「まぁな、童話の里だからそういうことにも手が回るよ、って言われたらおしまいだしな」
マルクが言うと、アロンは少し考えて言った。
「カピトリヌスの神話の里とか、エスクリヌスの笑話の里から、色よい返事は期待できないかもな……」
カピトリヌスは内戦が長く続いて情勢不安定だし、エスクリヌスはテロリストの巣窟でテロが頻発している。
神話の里や笑話の里は、万世の秘法の拠点というより、前線基地の意味合いが強かった。
里の体面を保つ、本の救済が必要なのは変わらないが、下手をすると「どうぞご勝手に」となる可能性は否定できない。
などと話していると、ポールが割り込んだ。
「いいじゃない、童話の里と同じクオリティーで仕事してもらわなくても。手が回らなかったら、こっちで手配します、ぐらいの文言添えれば向こうも安心するでしょ。NWSで希望募ってさ、ついでに御用聞きもしてくれば一石二鳥じゃん」
「それはそうだが……あまりうるさくするのは考えもんだぞ」
マルクが言うと、ポールはあっけらかんと言った。
「大丈夫だって。5年前の銀霊鳥霊長砂漠落下事件の時だって、あんなに細かい対応してくれたじゃない。国を憂う気持ちは同じ、ましてや世界をや、ってことでしょ。それを「どうぞご勝手に」って対応したんじゃ、国の品位を疑われるからね。一本筋が通ってるから里として機能していけるんでしょうが。肝心の本にそっぽ向けれるようなことはしないって」
「——なるほど」
非常に説得力のあるポールの意見だった。
「あまりにもメルヘンな……虹球界への道の演出とかいう能天気な話はこっちに任せてもらって。肝心の本の救済についての方法をまとめればいいんじゃないか」
アロンが言って、マルクが溜め息とともに一言置く。
「それもそうだな」
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