第8話『童話の里の童話たち』
「やれやれ、結構あったなぁ。500冊ってとこ?」
「555冊よ」
「やっぱりね」
「さて、これを片っ端からページを繰るんだったよね」
ナタルが手を腰に当てて言うと、ランスが頷いた。
「そうです。風を入れるように、パラパラとめくってください」
「手袋とかしなくていいんですね」
ルイスが聞くとランスが答えた。
「手の油脂やインクの酸化が本の臭いの原因ですけど、童話の里の本たちは力がありますから、それも味なんですよ」
「そこは手がかからないんだね」
感心するキーツ。
「それじゃやりますか! 俺がA担当ね」
「じゃあ僕はB」
「私はCをやるわ」
「では私がDを受け持ちます」
「俺はEをやりますね」
こうして、彼らは本を一冊ずつ手に取って、ページを繰っていく。
『小さな家に小さな人』、『ポリーの一日』、『ロジャーの冒険』、『うさぎのペロー』、『森のひみつ』、『ハーブおばさん』、『ユリと聖人』、『あやしい黒ずきん』、『きつつき木の上』、『かみをむすんでごらん』、『ササブネはしっている』、『ナタリー博士とみつばち』、『おかたづけをすると』、『春ってなぁに?(四季シリーズ)』、『トムじいさん』、『シスルとドリー』、『天使のクレヨン』……。
膨大な数の絵本たちはどれもおしゃべりだ。
素敵な示唆に富んだ優しかったり激しかったりする絵が、作業する彼らの手を止めずにはいられない。
「懐かしいなぁ」
そう呟いたのはナタルである。
「『あまやどり』。男の子と女の子が、雨宿りした古びた店で、世にも不思議な虹の絵の中を探検するんだ。雨が降っている間だけの魔法でね、二人は雨が大好きになって、外に出たら大きな虹が空にかかってるって話」
「それずいぶんタイムリーな絵本じゃない? 虹球界の存在をみんなが知ったら喜ばれそう」
オリーブが言うと、キーツが笑って言った。
「ただテレポートしてくより、ファンタジー要素が増すよね」
「いっそそんなふうに仕立てて、テレポートする味気なさをカバーすればいいんじゃないですかね」
ルイスが言うと、ランスは目を閉じて言った。
「ドリームランド、虹球界への道ですか……その名に相応しく夢のような入口があったら素晴らしいですね」
「いてっ! なんだ?」
ナタルの背中に飛んできた本がある。
『マーメイドリーフの人魚たち』という本だった。
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