第6話『食糧問題』

 繁緑の四月もそろそろ終わる頃だった。

「降霊界から依頼が来たぞ。来たる世界の大変革後に予測される、因果界の食糧問題のために、生産修法3~5の習得者への協力要請だ」

 マルクの報を受け、腰を浮かせる面々。

「3~5っていうと、野菜・穀物・果物か……」

 ナタルが諳んじると、キーツが疑問を口にした。

「えっ、なんでわざわざ修法で準備するわけ? 真央界の余剰穀物だけで十分賄えるじゃん」

 即座に答えるアロン。

「保存の問題だろ。余剰作物じゃ、せいぜい1年しか持たないけど、修法でこさえた物なら5年以上持つ」

 トゥーラも続く。

「それに栄養価のある物を、因果界で安定して手に入れるのにも5年以上必要だからじゃないかしら。生産体制を整えるのも時間がかかりそうだし」

「呪界法信奉者が悪精で作った物なんて、食べられたもんじゃないだろうからね」

 ポールが苦虫を噛み潰したような顔をした。

 タイラーも言う。

「連中が万世の秘法の施しだとか思って、口にするのを嫌がることも考えると。真央界で作った物を流通させて捨てるようになるよりは、保存の効く修法作物の方が無駄は省けるわな」

「なーるほど。よくよく考えないと、もったいないことになるのか」

 キーツが納得したところで、マルクが続きを話す。

「集配は里ごとにまとめて行うそうだ。だから、里に倉庫を建ててそこに保管することになるから、建材4~6の修法者も募るっていう長老からのお達しだ」

「NWSで集計名簿作った方がよくない?」

 オリーブが提案すると、ランスが席を立った。

「そうですね。それで人材の振り分けを考えた方が早い。私、ちょっと印刷してきます」

 と言って、ランスはテレポートしてその場から消えた。

「いよいよだな……!」

 タイラーが意気込む。


「ははは、いやぁ久々だぁ、生産修法! 段を端折りそうで怖いよ」

「頼むぜ、ちゃんと復習しておいてくれよ」

 能天気に笑うポールにマルクが念を押す。

「あれ、みんな大丈夫なわけ?」

「ポールがいつも言ってるじゃない。修法は使わないと廃れるって。私なんか朝のデザートは旬のフルーツこさえてるわよ」

 オリーブの言葉にポールが驚く。

「おっと、意外な一面発見。それで朝30分早起きしてるの?」

「当り前じゃん」

「なかなかやるね」

 変なところで納得するポール。

「できたってことで安心して努力しないんじゃ、神の法って謂われてる生産修法が泣くぜ」

「えっ、タイラーもなんかやってんの?」

「朝のグリーンスムージーは俺の手製だ」

「ぶははは、タイラーがグリーンスムージー! しかも手製って」

 ポールが爆笑したが、誰も笑ってなかった。

「何がおかしいの? 私も朝のスープの材料は、豆も玉ねぎも出汁の昆布も全部手製よ」

 トゥーラが当然のように言った。

「へぇ、さすが凝ってる、って。みんなのその反応は……何かしらやってんの?」

「俺は家族に野菜の試食してもらってる。子どもが美味しいって言ってくれるとね、張り合いがあるよ」

 ナタルが照れながら言うと、キーツが褒めた。

「いいね、僕は甘党だから、野菜も果物もなぜか市販の物より糖度が高いんだ。マイ糖度表もあるよ」

「すごいですね。俺は麺好きが高じて、小麦粉に凝ってるんです。イメージが克明なほど品質がいいです。コツは甘やかさないことですかね」

 ルイスがプチ自慢を披露する。

「マルクとアロンは?」

 焦ったポールが聞くと、二人とも涼しい顔をしていた。

「俺とアロンは同じ時間に同じ修法作物を作って、それぞれ食べて好不調を診断してる。分析データもあるぞ」

「ちなみにランスさんは、教区のご老人に畑で作った物と一緒に修法作物を混ぜて、健康に貢献してるぞ」
















 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る