第3話『6班人間模様』

「もしもし、肩が怒ってますわよ」

「!」

 パティは背中を突かれて我に返った。

「……なんだ、メグかぁ」

 友人のマーガレット――メグ・プレイナーが気づかわしそうに見ている。

「今度はどうしたのよ?」

「みんなの呑気さにちょっとイラっとして……」

「もぉー、真面目なんだから。呑気な人は慌てて詰め込まなきゃいけない、ってそれだけだよ。勤勉な人はゆったり構えてられるのがご褒美なんだから、カリカリしただけ大損だってば」

「ちなみにメグはどっち?」

「ウチのリーダー、ナタルさんだよ。補助するくらいの気持ちじゃないと、2班は回っていかないの」

「……それもそっか!」

「そうそう」

「メグさん、パティさん、いよいよですね!」

 3班の後輩、ミルラ・ベクトラーが2人に声をかけてきた。

「ミルラは予習するタイプ?」

「はい! プレイナーの資格試験と重なって大忙しです」

「……」

 パティがミルラの頭を優しく撫でた。涙を浮かべている。

「? どうしたんですか、パティさん」

「パティはね、やる気ある人大好きなのよ」

「⁇」

 話が読めなくて、ミルラが小首をかしげる。

「パティ、ちょっといい?」

「アヤさん!」

 後ろから声をかけてきたのは、6班のアヤ・アスペクター。ランスの片腕でスーパーバイザー。同じ班のパティも一目置いている。

「パティの配属先は、ツリー班のポールさんの班よね。私はアース班だから、6班の勤怠管理を代わりにお願いしたいの。あなたの他にはコノミちゃんだけだから、そのフォローも懇ろに。やってくれる?」

「はい、承知しました」

「ありがとう、助かるわ。ミルラちゃんもよろしくね」

「は、はいっ、仲良く頑張ります」

「フフッ、いい子ね。お互い頑張りましょう」

 そう言ってアヤはナタルのフォローに戻った。

「はぁ……もう今回の班割が頭に入ってるって感じだなぁ」

「アヤさん、子ども扱いするけど、かっこいいから好き」

 メグとミルラが口々にアヤを褒める。

「うん、そうなの。アヤさんが同じ班だから、負けないように頑張ろうって思うんだよね」

「パティさん……!」

 またまた後ろから声をかけられた。ボリュームが極端に小さい。

「あ、コノミちゃん。今ね……」

 パティがアヤから世話を頼まれたことを婉曲に言おうとすると、コノミ・ベクトラーは必死に遮った。

「知ってます。アヤさんに今回の仕事ではパティさんに頼って、と言われました」

「あっそう……」

 拍子抜けするパティに、一生懸命言い募るコノミ。

「あのっ、あのっ、私気が弱いですけど、パティさんの足手まといにならないように頑張ります。至らないことがあったら、どんどん指摘してください」

 ——ウサギが耳を押さえて、すまながってるような印象だった。

「……あのさ」

 パティはどう言ったものか、考えあぐねた。

「は、はい」

 ますます委縮してしまう。

「……その状態で仮に私が仕事を指示しても、聞こえないんじゃないの?」

「えっ、えっ?」

 言われたことがわからなくて動揺する。

 コノミの後ろに回ったミルラが、肩に手を置いて落ち着かせる。

「大丈夫、パティさんは怖いんじゃなくて、情熱が人の3倍あるだけだから」

「……」

「フォローありがとう。あのね、コノミちゃん。私と同じ班だってことは、同じ修法で仕事ができるってことでしょ。つまり、やり方のいいまずいだけの差しかないってことじゃない。違う?」

「……はい」

「うん。アヤさんは常に班の利益になるように、メンバーを動かしていくけど、私ははっきり言ってそういうことが苦手なの。だから、メンバーの自主性を重んじるやり方なのね。コノミちゃんは今まで、アヤさんに言われたとおりにやってればよかったよね」

「はい……」

「今回は自分で考えて行動しなくちゃいけないってことを、まずわかって。逆に言えば、自分に何ができるのかわかる絶好のチャンスじゃない? そのために考える時間も余裕もたっぷりあげる。よっぽどのことがない限り、私は仕事を指示しないから、そのつもりでね」

「はい……」

 コノミは所在なく、とぼとぼとアヤのところへ歩いていった。

















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