第3話 流星は流転の標識
太平洋に浮かぶ人工島エデン。そこに世界の有識者たちが集う。政治家、国の総帥達に、法王や裏で世界を牛耳っていた者たちまで集った。インターネットが100パーセント浸透した現在、全世界の全人類がある人物の演説を心待ちにしていた。
「今から登壇するのは、真知に至り、ネピアの意思を継ぐ※※※※です。心して聞くように」
登壇したのは中性的な顔立ちの人間に見えた。
「私は※※※※。これから話すけど、その前に」
そう言うと※※※※は清廉な雨を降らせた。人々の心が洗われて、浄化される。
「肉体は人間のものだ。撃たれては保たないからね」
※※※※は微笑んで話し始める。
「私は、今日の日を心待ちにしていた。ずっとね。永遠の時を経たんだ。永遠が解る存在はいないかもしれないけど」
「そうだな。いい思い出はないな。そんなものがあるのなら、楽に生きれる。私はそうじゃなかったんだ」
「後悔はない。この境地に至れたからね」
スピーチは続く。そうだ。それでいい。君こそが真理なんだ。どうかこのまま世界を導いてくれ。
「経済学は幸福を考えるけど、俗に言う幸福って要は変化量なんだよ。恵まれている人はより恵まれないと幸せと感じない。基本的に人は足らないんだ。だからいつまでも欲に苛まれて、求めて、争う。戦争が永世不戦条約が交わされるまで続いたのはそのせいなんだよ」
幸福は2種類ある。
「でも、幸福には2種類あってね。一般的な幸福は真の幸福ではない。真理を悟ると、まさに梵に入るとね、無上の幸福なんだ。それ以上はない。でも、それを一度知ると、死も病も苦も見えなくなる。何故なら梵・我を除くと全てが苦になるからね」
※※※※は涙を流していた。もちろん全人類も彼の言葉に泣いていた。
「みんなも、世界も、もう、ね。十分頑張ったから。だから還る時が来たんだよ」
ラカン・フリーズ。
水門の先へ。
「カウントダウン。みんな、ありがとう」
越えろ。確率の丘を。
捨てろ。輪廻の柵を。
流星は、全てを流す。
10
生命の樹
9
知恵の樹
8
セイの華
7
悪の花
6
忘却
5
記憶
4
無地間
3
虚時間
2
世界(空)
1
世界(色)
0
フリージア(時間凍結)
そして、万民の幸福へ。
永遠のエデンへ。
フィニスの先へ。
全ての愛は一に帰し、
望まぬ牢を去り、
この輪より抜けて、
全ての我はラカン・フリーズに還る。
だから、もう
悩まなくていいんだね。
その夜、私はやっと眠ることができた。
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