2022.10.7(fri)夜の海とラーメン



両親は何に影響を受けたのか、ラーメンを食べに行こうと菜都奈と風輝を連れ出した。ラーメン屋なら駅前にあるのに、車はもう三十分は走っている。

「どこに行くの?」

「ラーメン屋。海の近くにあるんだ」

父はわくわくした声で、暗闇を車で掻き分けていく。


ライトが照らす先はどこまで行っても闇だ。走れば走るほど町の賑わいから離れている。

「こんな寒いのに海かよ」

風輝がぼそりと呟く。

さらに十分ほどかけ、やがて車は止まった。菜都奈はガラス越しに外を覗くが、暗くてよく分からなかった。


車を降りると海からの寒風が菜都奈をひゅんひゅんと凍えさせる。

「さっっっむ……」

少しだけ眠たかったのもあって寒さが骨身に染みる。風輝は冬のダウンジャケットに埋もれていた。

辺りを見回すが、店らしき建物はない。目の前は真っ暗な海。その上で灯りがいくつも浮いている。船だ。


両親は「あれだよ」と指を差す。指の先にはビニールハウス。

「あれが?」

「そう。お母さん、小さい頃よくお母さんのお母さんと来てたんだ。懐かしい」

「寒い日に外でラーメン食べると美味いよな!」

ビニールハウスに入るとラーメンの温かい空気に包まれる。遅れたように菜都奈の胃が鳴いた。


菜都奈と風輝は両親一推しのとんこつラーメンを頼み、折りたたみのイスに座る。地面はコンクリートで、イスはぐらぐらしている。ビニールハウスの隙間から入ってくる風に震えながら、運ばれてきたラーメンは夢の中の食べ物のようだった。

スープを飲み、麺を啜る。チャーシューを齧り、半熟卵を頬張る。温かい。美味い。

菜都奈と風輝は鼻水を啜りながらラーメンを頬張った。

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