2022.10.6(thu)寒雨とカイロ



「さっっっむ!」

すっかり冷えた指先。菜都奈は少しでも温めようと手を脇に挟む。昨日までは暑かったのに、今朝から急にこの寒さ。秋は気温が不安定だ。

下校時刻になっても朝と変わらず体は温まらない。ヒートテックもカイロも持たない脆弱装備。事前に天気予報は見ていたのに、冬をすっかり忘れた体は寒さを舐めていた。


菜都奈は足早に帰ろうと、上履きからローファーに履き替える。冷たくて硬い。足が凍りそうだ。

「あ、菜都奈ちゃん」

菜都奈は呼び声に顔を上げると、暖かそうな格好をした柊がいた。

「! そっか、今日木曜日……」

「うん、もしかしたら会えるかなって思ってたんだ」

そう言いながら柊は菜都奈の手を握る。


「あっっったか!?」

「カイロ。使って」

「準備いいですね……ありがとうございます」

「去年のやつ余ってたから」

じんわりと温まる。菜都奈はカイロにしがみついて、鼻の頭にも当てた。外は雨が降っている。傘の持ち手にカイロを巻いて、両手で握りしめた。


「尽の家に行くんだけど、菜都奈ちゃんも来る?」

「あー……いや、今日は行かないです」

「……そう。用事?」

柊は青い傘から顔を覗かせる。

「漫画を読んでる途中で」

「そっか。テスト勉強は大丈夫?」

「……痛いところを突きますね。大丈夫じゃないですよ」


「でも漫画はやめられないんだ」

「まあ……頭の中が漫画でいっぱいです」

「あはは。いいね、楽しそうで」

「柊先輩もテスト終わったら読んでみるといいですよ。今度タイトルとか教えます」

大きな公園を突っ切る。菜都奈は葉から落ちた大粒の雨が傘に当たる音を聞いた。こんな天気でもダウは散歩に行っているのだろう。柊は「楽しみにしてる」と、その手前にあるテストを憂う声で言った。

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