2022.9.25(sun)原画展とお洒落なカフェ



八月の終わりに発券した原画展のチケット。ついに今日だ。

菜都奈は気合いを入れたワンピースを着て駅で文香と待ち合わせをした。原画展は渋谷だ。今日のために美味しい食べ物の店を調べてきた。菜都奈は文香と興奮混じりで電車に乗り、握りしめた原画展のチケットを何度も眺めた。


入場時刻は十時。十分前に現地に着くと、既に行列ができている。老若男女さまざまだ。

「すごいね、こんなに人がいるんだ」

菜都奈がほろりと言葉を溢すと、文香が力強く頷いた。

「学校ではあまり見かけないもんね。なんかカンドーしちゃう」

「全員と友達になりたい」

「私は全員のSNSアカウントを知りたい」


そんなこんなを言いながら列に並ぶ。中に入れたのはそれから三十分後だった。

原画は思ったよりも生々しく、圧倒的な絵だった。どこか遠くで生み出された、どこか遠くの世界の話。漠然とした感覚が、今、菜都奈の眼前に迫る。くらくらするほど熱量のこもった黒いインクが、鉛筆の下書きが、何時間でも見ていられるほど濃かった。



「だー! 楽しかった! すごかった!」

しこたまグッズも買い込んで、大満足の菜都奈と文香は幸せに浸る。文化祭の疲れなど吹っ飛んで、今すぐ走り出したい気分だ。けれど九月の下旬、まだまだ日中は暑く、二人は店に入ろうと、調べておいたカフェに向かった。

カフェは三連休ということもあって混んでいたが、運良く並ばずに入れた。


ステンドグラスの隣の席で、珈琲の匂いが落ち着く店だ。菜都奈は調べておいたレトロプリンを、文香はあんみつを頼む。

菜都奈はエコバッグの中でごちゃ混ぜになったグッズを取り出した。

「このブックカバーすごいお洒落だよね。額縁に入れて飾りたい」

「ねー! 色使いが芸術。このキーチェーンもタイトルロゴだけのシンプルさが逆にオシャレ! あたし二個買っちゃった」

「私はポストカード全種類買った! あとでカードホルダーに入れて画集っぽくするんだ〜」


運ばれてきたプリンは、生クリームの上に帽子型のココアクッキーが乗っている。固くて濃厚で、カラメルはエスプレッソの苦味が効いていた。

「おしゃれー!」

地元にはない洒脱なプリン。菜都奈の想像ではレトロプリンといえば、上にさくらんぼが乗ったもののイメージだったが、今日のプリンでひっくり返された。この店のためだけに、また東京に遊びにきたいほどだ。

文香もあんみつを食べて唸っていた。

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