2022.9.2(fri)食堂のナポリタン
久々の高校の昼ご飯だし食堂に行こうか、と文香と決めた。菜都奈たちは普段はコンビニ弁当や通学路にあるパン屋で買ってきているが、もう一ヶ月も食堂には行っていない。飽きていた味でさえ懐かしくなる。
それはみんなも同じだった。食堂は人で溢れかえっていた。
暗黙の了解でテーブルは学年ごとに決められている。入口に近い方が一年の場所だ。菜都奈と文香はテーブルの中から空いている場所を確保すると、何を食べようかと券売機に移動する。
文香は見るなり声を上げた。
「あー! 今日うどんないじゃん、気分だったのに〜。えーどうしよう。菜都奈何食べる?」
「うーーーーん……カレーはちょっと前に食べたし……ナポリタンにしよっかな」
「えー? 食堂の麺類って伸びてるじゃん、いいの?」
「ナポリタンだとそこが逆にいいんだよ。レトロ喫茶みたいな気分になって」
「うそー。ほんと? じゃ、あたしもナポリタンにしよ」
長い行列に並ぶ。けれど五分もしないうちに食券を渡してナポリタンを受け取り、確保しておいた席に着けた。
「はー疲れた! 菜都奈、今日の漢字の確認テストできた? あたし全然分かんなかった」
ナポリタンはやはり伸びきっている。伸びきって太麺らしくなったナポリタン。菜都奈も文香も、箸で数本を摘んで食べる。
「私あれやったの八月の頭だもん、もう忘れたよ」
漢字テストは夏休みのプリントから出題される。現代文の浜岡はそう言って「宿題をやってれば解ける問題だ」と意地悪く笑った。
「だよね! しかも漢字とか暗記じゃん、あたしあのプリントやってた時の記憶ないもん。手だけが勉強してた」
「ふふ、それってあの漫画のやつみたい。手が地球外生命体になるやつ」
「それやば! 私の手にもいるみたいじゃん」
「漢字のテストもやってくれればよかったのにね〜」
文香はナポリタンを噴き出さないように、俯いて肩を震わせた。ほとんど白紙、所々に創作漢字が紛れ込んだバツだらけのテスト用紙。思い出すと憂鬱になるが、右手が寝てたと思えば何だか許せる気もする。
ナポリタンは伸びきっているから、菜都奈と文香はチャイムが鳴るまでゆっくり食べていられた。
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