2022.9.1(thu)始業式
四十人近く人がいる教室の中を、一台のクーラーで冷やすのは厳しい。設定温度は高めだし、集中管理されている。
菜都奈は汗ばみ始めた制服をパタパタと仰いで、自販機で買ったお茶を飲み干した。クラスメイトは夏休みが明けたことを残念がる人が半分、笑顔で思い出を語る人が半分だ。菜都奈の前の席の田中は、インドア派らしい見た目だったのだが、この夏休みで真っ黒に日焼けしていた。菜都奈はツンツンと背中を突く。
「? 何?」
「夏休みどこか行ってきたの?」
「ああ。親戚の手伝いで海の家のバイトしてたんだ」
「へえ! 教えてくれれば行ったのに」
「うーん、俺働いてるとこ人に見られるの嫌だからな……」
変なところで恥ずかしがり屋だ。
菜都奈は「残念」と肩を竦めて、号令係が呼ぶ声に立ち上がった。始業式の体育館へ向かう列は出席番号順だ。
とにかくみんな話すことは山ほどあると、移動中もお喋りが止まらない。菜都奈の前を歩く篠宮は、韓国に行ってきたのだと写真を菜都奈に見せた。
「これは空港の写真。でこれは向こうのアイス屋さん。あっちはスイーツがすごくって、ご飯系は辛いのが多いけど、最終日くらいになったらもうさ、逆に辛くないと物足りなくない? みたいな」
「じゃあ今日のお昼も辛いの食べるの?」
「そのつもりー。てか志葉さんも今度食べ行かない? オススメの店あるから」
「うん、今度」
篠宮は白い歯を見せて笑むと、今度は体育館で隣のクラスの人に話しかけていた。
始業式は三十分ほどで終わって教室に戻り、担任から早速文化祭のプリントが配られる。菜都奈が一番楽しみにしている行事だ。そうこうしているうちに防災訓練が始まり、担任の指示で机の下に隠れた後、校庭に避難する。防災訓練は毎年欠かさす行っているので、みんな動きがスムーズだった。
防災訓練が終わって再開されたHRも午前中に終わり、菜都奈は文化祭でどんな店をやりたいかとうきうき考えながら帰る。
去年からは想像もつかないほど、高校生の九月一日は楽しい。
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