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「わかった。すぐ行く」


という返事をもらい、僕は木々村くんを待つことにした。

いつもの喫茶店。

先に席を取り、待ち人が来るまで待つことにした。

夏だからか、人がそこそこ涼みに来てる。

お昼の時間であっても、こんなにも人がいるなんて。

人に聞かれたくない会話をする場合に備えて、隅っこの場所をとっておいた。



席を取って水でそのままやり過ごしてもよかったんだけど、やっぱり冷たいのがいいよね。ここに来たら何かを味わいたくなるということで、注文をすることにした。

季節限定メニューがあるそうで、僕はいちごフラッペを頼んで待っていることにした。


僕はその間、手にあるケータイで擬人化された女の子を育てるゲームで暇潰しをしながら、今回の件についての考察を進めていた。

何のゲームかって?そりゃ、今流行ってる女の子を育てるゲームだよ。



「悪かったな。待ったか」


ケータイで遊びながらだと何も考察は進まなかった。

まぁいいか。デイリー消化だけはできた。


顔を上げると木々村くんが、額に汗を滲ませながら立っていた。


「わざわざ来てくれてありがとう」


「いや、お前が俺の家に来るよりはな」


「それもそうか」


木々村くんは僕を自分の家に入れたがらない。

他人を家に呼びたくない理由はそれぞれだろうけど、木々村くんの理由は何だろうか?

よくあるのは、家族に会わせるのが恥ずかしいとか。

木々村くんの場合は恥ずかしいとかはないような気もするけど。


「まずは座って注文しなよ」


「あぁ。そうだな」


と木々村くんはメニューを確認して、何を頼むか決めたようだった。素早い。


アイスティーを注文してさっとこちらに顔を戻す。


「話したいこととは何だ」



「生徒会に行ってきた」


木々村くんの顔が少しだけ動く。別に驚いているわけじゃない。やっぱりその話か、とでも思っているのだろうか。


「言っていたな。直接話したのか」


「うん。夢見坂ちゃんと副会長さんとね」


「副会長?ああ、前に言っていたな。それで何かわかったのか?」


「確定はしてないけど、何らかの関わりはありそうだね。何かを隠してそう。けど、それが木々村くんや水沢上くんの記憶に関わることかはわからないけど。でも、多分そうなんじゃないかなって」


「そうか」


「僕がどうしてそう思うか疑問に思わないの?」


「気にならないことはないが、それよりも先の話だ。話したいことを先に聞きたい」


「そうだね。じゃあ、先に話しちゃうけど、生徒会の会長が行方不明らしい。

それの捜索の手伝いをするって約束をした」


「ん?いや、どういう流れだ?」


「ごめん、端折りすぎたね。かいつまんで流れだけ言おうかな。

向こうは恐らく能力者だけど、僕に助けを求めてきた。会長を探す手伝いをするって助けね」


「生徒会と協力することになったということか」


「あ、うん。そうだね。多分だけど、彼女たちは僕らと本来は敵対してるよ。恐らくだけど、記憶に関しても彼女たちは知ってると思う。けど、それを表に出してしまうと僕たちが敵対せざるを得ないことが判明してしまうから、それを表に出さないで協力することになってる」


「なるほど。まぁ、わかった……記憶に関しては何も進んでないのか」


木々村くんは、不満を表情に携えていた。

それからアイスティーを喉に流し込み、その不満を咀嚼するようにして顔をこっちに戻した。あるいは不満を流し込んだか。


「ここで上手く協力すれば、恩を売れる。そしたら、記憶のことも進むと思うよ」


「なるほどな」


これで納得してくれたかもしれない。


「彼女らが言うには、会長は何らかの能力の事件に巻き込まれたのでは?って。少なくとも彼女たちはそう思ってるみたい」


「だから、俺の出番というわけか」


「そうだね。学校外を調べて欲しい。そっちの方が広いと思うけど。あ、捜索とか慣れてる?」

「能力の残り香次第でもあるな。1日以上空いてるとほぼ無理だが……」


「じゃあ、無理ゲーかも……」


「だったら俺以外の違う方法だな」


「例えば?」


「……師匠に頼むとか」


「お師匠さんに?」


「人探しに強い能力者がいるんだよ。ただ、俺の頼みでは派遣してもらえないかもしれないが」


「だめじゃん」


「そうだな。現実的じゃない。俺がやるしかない」


「恐らくだけど、会長も能力者なんだと思う。その痕跡を辿れたらいいと思う」


「いや、俺は会長の匂いなんて知らないぞ」


「例えばだけど、僕が怪しいところ見つけるから、その辺りで能力の痕跡があるかどうかを見てくれればいいんじゃないかな?って思う。そこで会長が見つかったらラッキー、みたいな?」


「本気か?」


「例えばって言ったじゃん。僕が怪しいところ見つけて、木々村くんに様子見てもらうってのは現実的だとは思うけど」


「無作為に探すよりは楽だろうが……」


木々村くんは不満そうだった。

まぁ、そうだよね。

うん。

「作戦は今から考えよう。木々村くんの師匠に相談するのも含めてさ」


でも、僕が怪しいところの当たりをつけるってのは、怪異にやられてるところを探すってことだから、個人的には現実的なんだよね。

しかも今回の場合、噂になるくらいには十分重要な人物がいなくなったってことだから。


人がいなくなった、とか普通だったら何も起きないけど、今回は生徒会の彼女たちは、何かがあったと信じている。

不思議現象が関わっている何かだと確信しているくらいには、何かがあってもおかしくない。


木々村くんにはわからないかもしれないけど、怪異が生じうる条件としてはかなり濃く存在している。

賭けてみるのもアリだと僕は思う。

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