89-「生徒会室訪問」からの「人助け」②

「君は何を調べようとしているのかな?」



油断していた。

肝が冷えるとはこういうことだった。

このタイミングで来るとは思わなかった。


「どういうことですか?」

なるべく平静を装う。

言葉を発した内に汗は引かせた。


「凪元くん、何か調べるためにユノアに近づいたんでしょ?私はそう聞いたけど」


「夢見坂ちゃん!?」

これは心の声だった。

何かが漏れたらしい。


「だって私に生徒会のこと聞いてくるからさ。何か知りたいんでしょ?」


僕が非難めいた顔を向けると、夢見坂ちゃんは、りんごを食べるときには皮を剥くよね?のようなテンションで答えてきた。


「私はそう聞いたから。凪元くんが何を知りたいのか教えてほしくて」

副会長も確信を持ってるようだった。

でも、僕が記憶を消す能力を持ってる者を探していることはまだ知らないのか?


やっぱり上手く行きすぎだと思ったんだ。

誘い込まれた形になったね。

僕も覚悟はしていたけど。


でもどう聞こうかな?

いきなり能力者だよね?とか聞いてドン引きされるかもしれないし。

いや、いいんだけどね。ドン引きされても。

一瞬の内に様々な考えを巡らせ、結局僕は当初の予定とは外れるけど、切り込むことにした。

覚悟を決めた。



「水沢上くんの様子がおかしくなったの知ってる?」


「中の様子?」


「先輩いいですよ、もう。なんか凪元本題に突っ込むつもりみたいなんで。なんか確信があるんでしょ」


「そう?じゃあ、私たちも質問するね。凪元くんの質問に答える前に。その返答によって、私たちがどうするか決まるから」

副会長がまとっていた空気が変わったような気がした。

何かがある。


やっぱり、生徒会が噛んでたということか。


「なんでしょう?」

声を出すことによって気を保たせる。

スポーツやるときに声出しをする時のようなものだ(嘘)


「会長に何かした?」


「は?」


それはあまりにも予想外の質問だった。

僕の想定を大きく外れていたので、素っ頓狂な声を出してしまった。


「その反応は、会長のことを知らないみたいだね」


「演技かもしれないですよ。凪元、よくとぼけるんで」

夢見坂ちゃんが言うかな、それを。夢見坂ちゃんだって、僕が生徒会について調べていることを勘づいていたのをバレないようにしてたじゃない。


「会長がどうかしたんですか?」

僕は夢見坂ちゃんの非難をスルーして先を促した。


会長というのは、岩石動仙人(がんせきどうひとひと)さんだ。

実際に話したことはないから、人と柄はまだそこまで詳しくないけど、噂だけは聞いてる。

背が高くイケメンで、引き締まっている身体。

女の子からしたらたまらない存在だと。

それに以前には超美人の彼女がいたとか。

いや、いたとか、と言っているけど、その相手が古今泉ちゃんのお姉ちゃんの古今泉百々華さんだってことも知ってる。


という誰でも聞いたことあるようなことは頭に入っていたけど、動向については知らなかった。僕の情報力もまだまだということか。


「実は数日前からいなくなってるみたい」


「数日前とは?」


「最後に連絡取ったのは金曜日だよ。そこから土日を挟んで月曜日まで連絡取ってなかったんだけど、昨日も今日も学校に来てなくて」


「先輩が月曜日に学校来なくて連絡もなかったから、先輩の家に訪ねて行ったんですけど、実は家にもいなかったみたいで」


「ホントですか、それ」


今日が火曜日だから、4日間ほど連絡が取れてないことになるのか……。


「君は知ってるかなって」


「いや、知らなかったです……そもそも何で僕が知ってるって思うんですか?」


「うーん……」


副会長は唸ってしばらく黙っていた。


「あ、ごめんね、質問にすぐ答えられなくて。ちょっと待ってね。ねえ、ユノア。どう思う?」


「多分、嘘はついてないと思いますけど……」


急に歯切れが悪くなった。

何か引っかかるものがあるんだろう。

何だろう?

予想してみよう。

これは、これからの僕の命運が決まることかもしれないから。


まず1番悪いこととして、彼らが僕の記憶を失わせようとしている、ということ。

もし、会長の行方を知っていたら、それを聞き出そうとしていたけども、僕があまりに知らなさそうに答えるから、それが本当か分からず、記憶を消すかどうか迷ってる、という線。


ポジティブな方向としては、彼らが別に能力に全く関係なく、単純に僕の能力を買って、会長探しの手助けをしてほしい……とかかな。


いや、能力に全く関係ない、ってのはここからは流石に希望的憶測すぎる。



恐らく何らかの事情があって僕の助けを借りたい。けど、僕と敵対関係になりたくはないってところか。

いや、僕との敵対関係を明らかにさせたくないってところか。


僕がこのまま、君たちが木々村くんの記憶力を低下させてるんでしょ?って話をしたら、恐らく敵対関係を明確にさせてしまう。

それは僕にとっても相手にとっても好ましいことではないだろう。

ここまで受け入れて、会話を繰り広げている時点で僕と表立って敵対したくはないはずだ。

もしここで敵対行動を起こせば、僕はこの敵地ど真ん中での最高の立ち回りを求められるし、向こうは僕に協力を求められない。



なるほど。

会長がいたら、向こうとしては、もう僕に協力を仰ぐ必要はなかっただろう。

だけど、今は会長がいない。そこで、僕の調査能力を頼りに力を仰ごうってことかも。

(今までの流れから、僕の調査能力を評価しているのかもしれない?)



だから、ここで僕が行うことは、ここで協力関係を築き、平賀副会長や夢見坂ちゃんが僕を裏切りにくくする、ってのが1番いいのかもしれない。


もし、僕の目論見が外れていたとしてもそれはそれだ。

僕が骨折り損のくたびれもうけってだけで、実害はほぼない。


よし、この方向性で考えてみよう。


「会長がいなくなったことは今初めて知ったけど、会長を探す手伝いを探してるなら、僕も力になれるかもしれない」


その言葉を聞いた副会長は、表情がパッと明るくなった。

「本当か」



「うん。さっきも言ったでしょ。人助けが僕の喜びだって」


「?」


副会長は何言ってんだこいつ?みたいな顔をしている。

あれ?引かれた?

あ、副会長にはこんなセリフ言ってなかったっけ?

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