85-テスト後の空気とは思えない
家に帰ると殿子さんにからかわれるというイベントはあったが、能力に関することで大きなことは何もなかった。
俺の記憶も治らないままだ。
いい加減、ポンコツを脱したいものだが。
何とかしようと思ったとしても、学校では俺には進展を何も感じられない。
凪元なら、何らかの進展を語れるのかもしれないが。
能力の進展は語れないが、俺にできるのは勉強の進展に関して語るくらいだ。
次の週も俺は古今泉に古文を教えてもらった。
助動詞というものが少しはわかった気がする。
実は現代語にも助動詞というのがあるんだってな。
今まで認識したことはなかった。
多少、古文に対しての見方がわかってきた気がする。
古今泉に感謝だな。
古文の先生が授業中に言っていることは相変わらず意味不明ではあったが。
学校では、能力に関しては無為に過ごし、6月後半に期末テストが終わった。
古文のテストに関しては今までの中で1番手応えはあったように思う。
結果はどれくらいかはわからないが。
テストの最終日。
俺は凪元に呼び出されていた。
事前に学校の外で話すということだったので、恐らく、能力関係の話だろう。
学校の外に出て初めてそれに気づいたが。
外は暑いので、またいつもの喫茶店で待ち合わせだった。
「よ。木々村くん。テストどうだった?古文赤点回避できそう?」
出くわすなり第一声がそれだった。にこやかな笑顔を俺に向けてくる。
昼飯を食べ、テスト明け当日で睡眠時間が少し足りてない中でその煽りはちょっと琴線を刺激したが、いつものことだと思い、腰を下ろした。
「前回よりも手応えはあるつもりだ。結果は……返ってこないとわからん」
「来週がドキドキだね。通ってるといいね」
「本題は何だ」
「注文頼んでからにしよ」
と俺たちは先に注文を頼むことにした。
注文したものが来たところで、凪元が切り出した。
「木々村くんの古文の勉強の邪魔になったらいけないと思ってね。テスト終わるまでは、待ってたんだ」
それはありがたいことだ。
「で、話とは何だ?」
「木々村くんと水沢上くんがやられた話のこと」
「何か進展があったのか」
「水沢上くんがやられたじゃん?だからさ、相手は僕達と水沢上くんが接触したことに気づいてると思ったんだよね」
「なるほど」
「んで、しばらく、水沢上の周りとか、僕とか木々村くんとかの周りを注意深く見ようとしたんだけど」
「それで」
「結論から言うと、生徒会のメンバーが怪しい」
水沢上が生徒会の一員だからそこに行き着くのも自然か。
「怪しいだけか?」
「この結論に至るまで、実は色々あったんだけど。その辺の話は長くなるから。聞きたかったら聞いて」
「そうだな。根拠だけでも聞いておきたい」
「根拠ってほど強いものはないかな。テスト週間であまり目立った動きはなかったし。簡単に言うと、周りの人間関係を追うと夢見坂悠乃亜に行き着いた」
「夢見坂……どこかで聞いたような」
「生徒会メンバーだよ。なんで彼女が生徒会やってるのかはわからないけど。そういうキャラじゃないはずなんだけどな」
「どういうことだ?」
「彼女も1年だけど、基本的にそんなマジメに生徒会で活動しまーす!みたいなタイプじゃないんだよね。もっと気怠げな感じ。先輩相手にも外面変えないし。ホント何で生徒会やっているのかは謎」
気まぐれかな?と凪元は呟いていた。
俺は1人、生徒会長に場違いな女生徒がいたのを思い出していた。
確か…お茶を汲んでくれた人だった気がするが。
違和感を抱いた覚えがある。
俺も場違いだったが、俺の次に場違いだったのは、その夢見坂だっただろう。
「その夢見坂がどうしたんだ。何かやってたのか」
「うーん。じゃあ、木々村くんが聞いてもわからないと思うけど、一応説明するね。
澤河仁ってやつが7組にいたんだ。
澤河仁くんは、好きな女の子がいました。
本人に確認したわけじゃないけど、それが夢見坂。多分」
「澤河仁って誰だ?」
「わからないよね。そうだよね。僕が以前に急に話しかけられた男子生徒だよ」
「?」
「関係ないって思ってて木々村くんには何も伝えてなかったけど、僕が調べ物してるときに遭遇してきたのよ。そっから、何かと声かけられるようになったんだけど」
本当にわからない話を展開してくる。
ここで食いついても仕方ないと思い、話を促すだけにする。
「それで?」
「急に話しかけてくるなんて何かあると思うじゃん?だから、かなり注意して見てたんだよね。そしたら、それまでは話をしてたって聞いたけど、そこから全く話しかけなくなった人がいたんだよね」
「どういうことだ?」
主語が無さすぎてわからない。
「澤河仁くんは、ある女の子のこと好きで、以前はその女の子とよく話してたんだけど、ある時期から話しかけなくなったって話」
「その女の子ってのが、夢見坂ってことか」
「そう。そういうこと。だから、怪しい」
「フラれたとかじゃないのか」
だから、話しかけづらくなった。ありそうな話だと思うが。
「その可能性もないわけじゃないけど、今のところ、そこの違和感が強い」
違和感が強いらしい。そこは調べた凪元自身が1番わかるところだろう。
「でもそれって生徒会でなくて、夢見坂が怪しいってことにならないか?」
「木々村くんの話によると、記憶のことに関しては去年から続いてるんでしょ?
それって、夢見坂が怪しいってのはおかしいでしょ?仮に夢見坂が怪しいってなっても、夢見坂がなぜか所属してる生徒会がそもそも怪しいとも言えるよね」
凪元の主張はわかった。生徒会に行き着いた流れも。
「うーん。無理矢理な気もするが……。手がかりがそれしかないなら、そこを詳しく調べるのもアリだな」
「そう。そういうこと。ちなみにもっと言うと、本当に怪しいのは、去年から生徒会にいた人物。
今の副会長や会長とか。継続して生徒会やってるんだよね」
今の生徒会長や副会長のことはよく知らない。
「……去年の生徒会長は確か古今泉百々華だったな」
「古今泉ちゃんのお姉さんね。確かに、その線もあるのか?お?となると、古今泉ちゃんの線も……?」
「いや、あいつは……あいつの能力は変身だ」
「能力って2種類以上のものを持てないの?」
「持てるかもしれないが……。ただ、去年はまだ高校に入ってなかったから、古今泉が犯人である可能性はそこまで高くないだろ」
仮に古今泉が、俺や水沢上の記憶を操作している側だとしても、そんなことをする動機。または、なぜ俺に対して協力をしているのか、といった疑問が浮かんでくる。
「例え2つ持てたとしても……か。
うん。ごめん。僕も言ってみただけ。
時期としてはあまりにぴったりすぎるんだけど、古今泉ちゃんが犯人であることはないと思う。犯人に繋がってるって可能性はあるけど。そしてその場合、お姉さんが関わっている可能性が高くなるけど」
「……考えすぎな気もするけどな……」
「うん。僕も言ってるだけ。古今泉ちゃんが犯人に繋がってるなんて、ホント考えたくない」
「だから、とりあえず、生徒会が怪しいってことでそっちに探りを入れたい。
僕の予感が当たってるかどうかはどうでもよくて。先に進むためにはそこから切り崩していかないとなって」
「わかった。俺にできることは何だ」
「それを相談しようと思ってね。
でも、ここは彼らの情報収集の優秀さを利用しようかなって。
彼ら、僕たちの動きを捉えるのが異常に早いと思わない?
だから、僕たちが何か調べてれば、食いつくと思うんだよね。
あまりにわかりやすくやったら、怪しまれるかもしれないけどさ」
「なるほどな」
「だから、生徒会のメンバーの動きをストーキングしたり。怪しい動きをしてないか、見ていこうってね」
「一応だけど、最後の砦の古今泉ちゃんには何も伝えないでね。もし相手が古今泉ちゃんを攻撃して、古今泉ちゃんの記憶もダメになったらもう何もしようがなくなっちゃう」
「わかった」
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