86-「情報収集」
木々村くんには、考えたくない、って言ったけど。
古今泉ちゃんの扱いは気をつけないといけないと思っている。
もし古今泉ちゃんが犯人側だとしたら、動機とかその辺りがホントにわからない分、めちゃくちゃ怖いけど。
だから、古今泉ちゃんには伝えないでね、と木々村くんには釘を刺しておいた。
別に怪しまれようと構わない。
古今泉ちゃんに情報がいかなかったらどうなるかの検証でもあった。
木々村くんは、見てて心配になる。
彼自身は高校生をやっているつもりだろうけど、高校生活に馴染んではいない。
側から見ると、どこか違うところを向いている。
普通の高校生じゃありませんオーラを放っている。
だからこそ、古今泉ちゃんが木々村くんに構う理由もよくわかっていない。
普通の高校生とは明らかに一線を画している木々村くんとあんなにも仲良くする理由ってのは、一度助けてもらったから、以上に何か理由があるのでは?と。
おっと。脱線してしまった。
誰から探るのか?
僕としては同じ学年の夢見坂ちゃんから攻めていきたいと考えていた。
彼女はギャルで、生徒会がない日は友達と一緒に帰ってどこかで遊んでたりしてるみたい。
僕も仕事がもうちょっとマシなら遊ぶんだけどな。
暇ができたら木々村くんに高校生がよくやる遊びとか教えられたらいいな。
むしろ跡をつけてることを思いっきりアピールしてプレッシャーかけるのもアリかもしれないけど。
でも、跡をつける、とか言っても、彼女が実行犯であるかも、他に実行犯がいるのかもはっきりしてない。
他に実行犯がいるとして、彼女がその実行犯と繋がりがあるかどうかもわかってない。
つながりがあったとして、彼女が実行犯と、実際に会うかどうかはわからないところなんだよな。
直接会うのは控えてるかもしれない。
メッセージアプリでのみ連絡をとっているという可能性もある。
その辺りを調べるのが目的って言ってもいい。
ただ、僕はIT関係得意じゃないからなぁ。
どうやって連絡をとっているのか、とか相手が誰なのかを把握するのかは不可能に近いんだよなぁ。
何か適当な手がかりをポロってしくれることを祈るしかないかなぁ。
行き当たりばったり感が強いから嫌なんだけど。
何にしろ作戦を決めるため、僕の方からアクションを入れよう。
設定としては、澤河仁くんの友達として、澤河仁くんの恋愛を助けたいということで。
なんとかして彼の恋路を応援したいけど、彼がなぜか奥手なものだから全然歩みが進んでなく、むしろ後退してることをもどかしく思う僕が、夢見坂ちゃんに近づいて様子を探る。
こんなシナリオならある程度不自然さを消せるのでは?
どーよ?
実際、澤河仁くんの恋が実ることは今のところない、というのはわかっているんだけど。
何故かって?
それは夢見坂ちゃんには彼氏がいるってのを僕は知っているから。
既に僕は知っている。
だから、その上で何も知らないフリをして近づく。
澤河仁くんが夢見坂ちゃんのことを好きかどうかは、事前の情報から、そうだろうということがわかっている。
ということを考えて、木々村くんと話す前から、夢見坂ちゃんに接近を試みていた。
バスケ部のあの幽霊騒ぎも何とか収めた。
そのお陰で僕が夢見坂のクラスに来ても不自然さはないように見えるはず。
夢見坂ちゃんと一緒に話せるくらいの距離感には持っていった。
澤河仁くんに聞いても無駄。
澤河仁くんは、教えてくれない。
彼氏ができたから、澤河仁が夢見坂と関わるのをやめた?
とはならない理由は何か?
やっぱり、彼氏ができたことが公然の秘密であるなら、そこが自然な理由になる。
木々村くんと話した後、僕は夢見坂ちゃんと話す機会があった。
「凪元って、私に彼氏がいることしってるよね?」
「え?何で?」
「いや、なんていうか、勘?」
「いや、知らなかったけど、いたの?」
「いるの?って聞くのが一つ遅いよね。いるの?って先に聞くよね、普通」
「そんなことはないと思うけど」
「ほら。そこ。普通、否定から入るんじゃなくて、先に私のこと聞いてくるよね」
う、と一瞬たじろいでしまった。つい勢いに押されて。
ここはシラを切るべきところだった。
ハッタリだとしても、この反応したせいで、僕が知っていると言っているようなもんだ。
「そう言われちゃうと何も言えなくなっちゃうけど」
「認める?」
弱気な僕の言葉に畳みかけるような語気で、食い気味で問い詰められる。
この言葉に対する反応を、僕は言葉には出さなかった。
その沈黙と僕の動きから相手は肯定と受け取ったようだ。
「じゃあさ、何が目的だったわけ?」
本当の目的とは、夢見坂ちゃんが、木々村くんや水沢上くんの記憶とどう関係しているかを探ること。
でもなー。正直に言ってもそこは何も見えてこないだろうから、設定通りでいこう。
「いやー。澤河仁くんが、多分夢見坂さんのこと好きだと思うから、何か協力できないかなって。澤河仁くんが付き合える余地ないかなーって探ろうと。
夢見坂さんに彼氏がいるかもってのは前々から何となく思ってたんだけど、確信は持てなかったから」
「つけ入る隙がないか探ろうとしてたんだ」
「僕じゃなくて澤河仁くんが、だけどね」
「だから急に私に付き纏うようになったんだ」
「付き纏うって言い方悪いけど」
「あたしさ、人に何か裏があるなってのはすぐわかるんだよね。大抵の場合、その裏もなんとなく想像できるくらいのものだからいいけど。だけど、凪元は思い当たる裏というか、目的が分からなくてさ。気持ち悪かったんだよね」
「え、ごめん」
気持ち悪いって言われちゃった。
「そういう意味じゃないよ。別に凪元が気持ち悪いって意味じゃない」
ふふっと笑いながら夢見坂ちゃんは言った。
うん、そうだよね。わかってたけど。でも、半分本気かもしれない。少なくとも、わざとそういう言葉選んだよね。
「でも、悪いけど、澤河仁と付き合うつもりはあたしにはないかな」
まぁ、そうだろうとは思ってた。
「あたしの彼氏、誰か知ってる?」
「いや、そこまでは」
多分、この人かなって当たりならあるけれど。
「今の彼氏にゾッコンってわけじゃないけどさ。澤河仁と付き合うかというと、今の彼氏の方がいいかなって」
「澤河仁くんは、夢見坂さんに彼氏いるって知ってるの?」
「さあ?わかんない。知らないんじゃない?」
ということは、勝手に夢見坂ちゃんから遠ざかったのか?それとも、あまりに釣れない態度をされたから、諦めたとか?
「そっか。僕の余計なお世話だったなぁ」
「うん。だから、もう余計なことに関わらなくていいよ」
「そうだね」
「じゃ、そゆことで」
僕と別れようとする夢見坂ちゃん。
となると、僕には夢見坂ちゃんと関わる口実が減るなぁ。
ここらで質問しておくか。
「あのさ、夢見坂さんのことで気になってることが一つあるんだけど」
「ん?何?彼氏が誰かとか?」
「いや、違うけど」
「そ。別に言いふらさなきゃ教えてもいいけど」
「うん。じゃあ、教えてもらおうかな。って、そうじゃなくて」
「聞かないんだ」
「うん。別にいいかなって。どうせイケメンは……って嫉妬するくらいだから」
「はは。何それ。あんたそういう系?凪元は、背低いから、かわいい系目指せばそこそこモテそうだけど。今のままでも好きになってくれそうな子くらいいると思うけど」
うん。そうだね。
それはわかってる。
「急に褒めないでよ。照れちゃう」
「凪元ってそんなキャラ?」
「いや、違うかも」
「で、何が聞きたいわけ?」
「夢見坂さん、何で生徒会に入ったのかなって」
「はぁ……うーん。なんとなくだよ」
大きなため息をついて、投げやりな感じで答えた。
聞かれるの、嫌なことだったのかもしれない。
僕はこれ以上機嫌を損ねないよう気をつけなければ。
「何となくなんだ」
「うん。そう。なんとなく。何で気になったの?」
おや、まだ返答の余地をくれるらしい。
「夢見坂さんのキャラと違うなぁって」
「あぁ、そういう。なら、キャラと違うから入ったというか」
「というと?」
「あたしってこんなナリだから、よく先生とかから目をつけられて。面倒だったんだよね。
でも、生徒会入ってれば多少は真面目さをアピールできるというか。文句も少なくなるかなって」
ちゃんと答えてくれた。
めっちゃしっかりした理由があった。
「そうなんだ。実際には?」
「すぐ生徒会入ったからわからないけど、当たりは緩いんじゃないかな。多分」
「目的はかなったってこと?」
「そだね」
「生徒会、面倒だったりしないの?」
「面倒なのかもだけど、そんな忙しくないし、先輩とかいい人だから全然」
「ふーん。そういう感じかぁ」
「納得した?」
「うん。まぁ、少しは」
「そ」
その言葉はもういいでしょ、冷たく突き放すようなものだった。
今日はこれくらいかな。
これ以上突っ込むと嫌われそうだ。
デカい口実はないけど、これから探っていくしかなさそう。
「凪元さぁ、人助けやってるらしいじゃん」
終わりだと思っていた会話の続きを夢見坂ちゃんの方から繰り出された。
人助け。
この学校は能力関係のことが多いから、厳密には僕の仕事はそのおまけ扱いなんだけど。
僕は木々村くんの代わりに現象を見つけるという、代行みたいな役割になってる。
だから、体育館以外のことも色々と首を突っ込んで探っていた。
そのことを言っているとはすぐにわかった。
「うん。やってるよ」
「凪元こそなんでそんなことしてるの?」
今度は逆に尋ねられた。
これには用意しておいた答えを答える。
「僕の人助けは恩返しだよ」
「……」
黙ってたので続きを話すことになった。
「僕っていじめられててね。でも、その後友達になってくれたでしょ?それが嬉しくてみんなのために行動したいって思って」
「それ本当?」
「ホントホント」
「奇特な人もいるもんだね」
「そうだよ」
「じゃあ、あたしが困ってたらあたしも助けてよ」
「いいよ。何か困ったら僕に教えて」
「わかった。楽しみにしとくね」
「どっちかってと、楽しみにならない方がいいよね」
夢見坂ちゃんから社交辞令を受け取り、僕はそれに軽口を返した。
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