77-手強い
翌日、昨日言ってたように俺は古今泉に連絡した。
「水沢上くん学校にいるよ」
とのことだったので、問題なく俺たちは学校を休んだ。
学校で襲われないとも限らないしな。
古今泉から
「なになに?水沢上くんが能力者なの?」
と返信があったが、そのまま下手なことはしないでくれと伝えておいた。
話を少し戻す。
昨日凪元の家のトレーニング施設のようなところで凪元の動きを見た。
凪元は本当に動けた。
新学期始まった際に、いじめられていたのは本当に演技だった。あいつらの蹴りなんて、止まって見えていたかもしれないくらいだ。
俺と凪元がお互いに本気でぶつけるつもりでやり合ったら、大きな怪我をするだろうくらいには動けた。
凪元の方が小柄な分、俺の攻撃が当たったら吹っ飛ぶかもしれないが。
昨日の水沢上とのやりとりは俺にはわからないが、凪元がやられていたのは不意をつかれたからなのかもしれない。よっぽどでない限り、凪元は対処できるように思えた。
凪元の動きを確認したところで。
俺たちに必要なのは、対能力の武装や戦術だ。
昨日は、防具をしていたが、腕も含めて縄で縛られた場合、何もできない。
「後、位置取りも悪かったよね。真正面で対峙してしまって起きてしまった事故とも言える?油断してた僕が悪いんだけど」
凪元の一撃が届かない間合いにいたなら、間違いなくそういうことなのだろう。
相手に遠距離攻撃がある場合、こちらの届かない近距離攻撃ほど役立たずなものはない。
「そういうところも含めてだ。遭遇する場所、誘き寄せる場所とかは考えないといけない」
「帰り道待ち伏せして、僕が前の方に現れてから、木々村くんが後ろからガバって感じで良くない?コンビニかどっかで待ち伏せてさ」
そんなんで上手く行くのか?と思ったが、色々考えて場所に関しては予め検討をつけておいたとしても、行けると思ったタイミングで仕掛けるくらいしかなかった。
どこかで待ち伏せて跡をつけるってのが現実的なラインだろうか。
「うまい場所見つけられればいいけどね。ダメだったら校門の近くで張り込みだね」
「そうだな」
ということで、作戦なんてあってなきがごとく。
水沢上は部活をやってる。その上、筋トレして部活後を過ごしたりしているらしい。
古今泉に水沢上が部活に行っていたかどうか確認してもらおうともしたが、結局そこまでやってもらうのは悪いということでやめた。
「いつものように仕事着だと数時間も張り込みできないから、普段着着ていこう」
ということなので、朝食を馳走になった後、一度俺は殿子さんの待つ家に戻り、下に凪元を待たせ、すぐに着替えて戻った。
殿子さんには予め連絡を入れていたため、俺が蜻蛉返りしても驚かれず「がんばってねー」と言われた。
この時期は18時以降も部活をやっている。
そして更に水沢上は残って筋トレをやっていく。終わりの時間はさっぱり予想がつかなかったが、粘り強く張り込むことになった。
20時を過ぎた頃、凪元から連絡があった。
来たよ。5人ほどのサーカー部員と一緒に校門を出たそうだ。
俺がこのまま凪元の方に向かって、頃合いを見計らい、水沢上に仕掛けることになる。
凪元の誘導に従い、向かっていく。
1人の男子生徒を見つけた。
俺が追いつく頃には友達と別れ、1人になっていたようだ。
そのことを凪元に伝えると
「オーケー。僕も木々村くんを確認できたよ」
と凪元から連絡が入り、そのまま跡をつけ、頃合いを見計らうことにした。
ちょうどいいところで、凪元が水沢上に声をかけた。
「昨日はどうも」
「お前は……。昨日?何のことだ?」
水沢上は凪元を認識したようだ。
「しらばっくれても無駄だよ。お互いに顔を認識してるでしょ」
「?」
水沢上は釈然としないようだ。
何か様子がおかしい。
おかしいが、打ち合わせ通り、後ろからガバっとする。
「おい、何だ!」
俺は後ろから水沢上の腕を掴んだ。
これでいつ能力を発動しても大丈夫だ。
しかし、こうもあっさり行くのか?
警戒する必要もなかった。
拍子抜けだった、
というより、水沢上自体が警戒していなかった。
昨日の今日でそんなことありうるか?
「凪元」
その言葉だけで凪元も俺が何を言いたいのか察しただろう。困惑と同時に驚愕の表情を浮かべ、今の水沢上の状態を信じたくない様子だ。
「えっと……昨日、僕を縛りつけたの覚えてる?」
「何の話だ?それと木々村良平?力が強すぎる。何の用だ。腕を掴まなくてもちゃんと用があれば対応する」
水沢上は心底不愉快だと言わんばかりに言い放つ。
これは、そういうことだろう。
「木々村くん、これ、嘘ついてるように見える?」
「確証はない。ないが……。演技ではないように思える」
「……」
俺に対して文句を言っていた水沢上も俺たちが困惑しているのを感じ取ったようだ。
何も言わないで様子をうかがっていた。
「どうしよう?これ?」
「いや、でも、学校外だぞ」
「うん、そこもおかしいんだけど」
俺たちは水沢上を押さえながらも困惑していた。
「でも……」と凪元は水沢上の方を見る。
水沢上は、俺たちが困惑している中、大人しく待っていたが、事態が何も進まないようだと感じたのか、口を開いた。
「どうやら、俺に何かあったようだな。あいにく、身に覚えはないが」
「どうするべき?」
と凪元が言葉を使わずに聞いてくる。
この場合、確実に脅威を無くすのなら、俺が能力を奪うべきだ。
だが、相手が能力を使わないと俺は奪えない。
こういうところ、俺の能力の欠陥だと思うのだが……。
このまま、水沢上を放置していいのかに関しては迷うところだ。
落とし所が見つからない。
人の思考を読める能力があれば、解決しそうなのだが、今はそんな能力者はいない。
俺の方も何もできない、と首を横にする。
凪元は、諦めたかのように水沢上に言った。
「ごめん。身に覚えがないなら、僕たちの勘違いだ。引き止めちゃってごめんね」
凪元がそう言ったので、俺も水沢上から手を離す。
「悪かった」
「いや、大丈夫だ。大したことはない」
腕を掴まれたくらいだ、と。何もなかったという風な。
こちらに対する敵意は感じられない。
軽く会話を交わして水沢上は俺たちのことをもう一度見渡した後
「何かあったら伝えよう。俺は何をすればいい?」
と言った。
よく分からないが、協力?しようとしているらしい。
俺には水沢上の考えはわからなかったが、凪元がそれに対応した。
「ありがとう。僕に関して何か心当たりのあることがあったら直接面と向かって話をしてくれたらそれでいいよ」
と言った。
「そうか」
と俺たちの目的の掴めなかった訪問に要領を得ないながらも了承してくれ
「じゃあ、何か思い出したら伝えることにする」
と言って、足早に帰っていった。
帰りゆく水沢上の背中を見つめながら、暗闇に消えていくのを待っていた。暗闇に消える前に建物に隠れて見えなくなった。
「何だアレは」
「能力かけられちゃってるね。木々村くんは反応なかった?」
「あぁ。俺がわかるのは、かけられている能力でなくて、使っている人間の方だからな。もし水沢上が能力にかけられていたとしてもその場に能力者がいて、能力をかけたばかりでないと俺にはわからない」
「今日、逆に学校に行った方がよかったかな?
あ、でも木々村くんは気づけないか」
と凪元は俺の能力を当てにしたかったようだが、一瞬で当てにならないと判断したようだった。
「学校外でも、通用するよう能力をかけられるみたいだね。同じ能力じゃない線もあるけど、多分、同一人物による能力だよね」
「そうだろうな。別物とは考えにくい」
「もしかして、僕に関わった人が能力にかけられる、ってことなのかな?」
可能性はある。俺と水沢上。能力に関して関わりのある人物が対象に記憶を失わせたり思い出させにくくさせたりする。
いや、待てよ。あいつ、思い出さなかった。
これはもしかしたら、池崎龍弥の方面の能力か?水沢上が演技をしていなければ、だが。
「もしかしたら別なのかもしれない」
「そんなことある?うーん。じゃあ、僕に関係のある人が狙われてるってのはない?」
「選ばれてるのは、能力に関係する者2人だ。凪元も選ばれてしまうかもしれない」
こうやって、能力のことに関わってしまっている。狙われないとも言い切れない。
結局、水沢上のことは何も解決しないまま、翌日俺は学校に行くことになった。
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