70-「襲撃されたんだよね」


木々村くんと学校を一緒に出て、校門から出た時に

「話があるんだけど」

と語りかける。


木々村くんは、何かまた面倒見なことか……と微妙に顔を崩した。

あまりハッキリとは顔に出さないようにしてるみたいだけど。

あと、単純に僕と一緒にいる時は側から見ると機嫌悪そう。

ハッキリ顔に出さないよつに見えるのは、機嫌悪そうから、嫌な気分になった時の表情の変化は少なめだってだけかもしれない可能性もある。だから実際には本当に嫌がってるかもしれない。

でも、何らかの能力のせいで僕に迷惑をかけている自覚はあるせいか、そこまで邪険には扱わない。



周りには下校途中の生徒が沢山いる。

ここであんなことを話すわけにはいかないので、話せるところ行こうと誘うわけだけど。

今はもう暑いから、涼めるところに行きたかった。

公園?嫌に決まってるでしょ。


あまり気乗りでないように振る舞っている木々村くんを無理矢理連れてチェーン店の喫茶店にやってきた。学校に近いところだけど、今は生徒はそんなにいなかった。

コーヒーを頼んでもいいのだけど、ここは冷たい甘いやつにしよう。抹茶のフラッペのやつ。細かい氷があって冷たい。おすすめ。

木々村くんは何を頼む?

こういうところに慣れてなさそうな木々村くんの注文の様子を見ていると、アイスキャラメルモカを頼んでいた。

意外だった。

木々村くん、紅茶とかコーヒーとか頼みそうなイメージだったのに。


「こんなところで話してもいいのか?」

注文を頼んで席に着いた後、木々村くんがそう切り出す。


席に座る前はいつものように僕がしてもしなくてもどうでもいいような会話を繰り広げ、木々村くんがそれに軽めに反応するだけだった。


さっさと本題を話してほしい気持ちと、周囲の人に聞かれてもいいのか?という心配とが混じり合った反応だ。


「クーラーが効いてるところで話したいと思って。僕の家よりはマシじゃない?」


「あー。なるほど……?」


木々村くん一瞬納得しかけたけど、いや、別にお前の家でもよくない?って思ってるね、これは。


僕の家、少し遠いからね。いや、めちゃくちゃ遠くはないけど。少なくともここよりは遠い。

木々村くんが嫌というよりは、僕の方が連れていくのが面倒というか、気が引けるというか。

だから、ここを選んだわけだけど。


「小さめの声で話すけど、もしテンション上がってうるさくなったら指摘してね」

「わかった」


「昨日、多分能力者に襲われた」

いきなり本題を切り出す。

僕の言葉を聞いた木々村くんは、眉をひそめた。いや、眉だけじゃなく、かなり表情が崩れたような気もするけど。でもすぐに表情を戻した。

「昨日の夜学校に行って、体育館の件を何とかしようと思ってたんだけど。その時に」


体育館の件なんてのは、木々村くん、多分知らないけどね。さも知ってるかのように話しちゃった。

まぁ、知ってるか知らないかは今は全く関係ないからその辺り気にせず話を続ける。



「それで木々村くんの意見を聞こうと思って」


「能力者に会って無事だったのか?」

「まぁね。何とか逃げおおせたよ」

「ならよかった」

対能力者に対しては僕は素人だから。木々村くんが心配するのもわかる。

無事だったのは僕もよかったと思うよ。あの攻撃は致命傷を与えかねないからね。


「どんな能力かっての考えて対策を練りたいと思ってるんだけど。物を投げる能力だった。ホーミング機能もついてる」

「投擲コントロールか?」

「専門家的にはそう言うの?」

「いや、専門家的ってわけでもないが」

「ふーん。そうだね。コンクリートブロックの塊を僕にぶつけてきたんだけど、どこから投げてるか分からなかったんだよね」

「軌道はどうだった?放物線だったか?」

「あー。そういえば、放物線ではなかったかな。直線状だったかも。なるほど。投擲能力だと思ったけどそうでないかもしれない」

「狙ったところにぶつけてくるなら、事前にマーカーをつけて、そこを自動的に追跡するように物を飛ばす能力はあるな」

「マジ?マーカーつけられちゃった?」


それは…ちょっと面倒そうだな。

だから投げた存在が見つけられなかったのか。


「どうやって防いだんだ?ホーミング機能がついていたんだとしたら、簡単には避けられないと思うんだが」

「いや、普通に避けられたよ」

僕の身のこなしがあってこそかもしれないけど。でも、運動神経がいい人なら避けられなくもないかも。

「後はぶん殴ったり」

「ブロックを?ぶん殴る?」

「小手を用意してるから。今ここにはないけど」

よっぽどでなければ、ぶつかってくる物ならそれを利用して捌ける。衝撃はくるし、それなりに痛いけど。

「野球選手が投げるボールよりは遅いから心配しなくていいよ」

軌道を変えて僕の腕を避けてぶつかってくるわけでもなかったから、その辺りは心配しなくていい。

対轟剛力雷斗戦の時の木々村くんのような無茶はしない。


「避けた後に急に進路を変えたりしたのなら、自動追尾機能がついてる可能性が高い。避けた後それが向かってこないなら、自動追尾はない可能性はある。わざと隠している可能性もあるが」

なるほどね。そう考えると、避けた後は僕の方に向かってはこなかったな。あくまで、避けたら地面に落ちたりしてた。あるいは僕が叩き落としたり。

「じゃあ、相手が隠してない限り、自動追尾の可能性は少ないか……。自動追尾じゃないとすると?」

「視認型か、あるいは、飛ばした瞬間の目的地に向かわせる設定型か……。あるいは実は単純に投げてるだけか」

「放物線のこと考えたら、アレは投げた軌道じゃなかったな。僕の方に向かってきたのは間違いないけど」

「テレキネシス」

「どんな技?」

「物を移動させる能力だ」

「それはわかるよ。一般用語だし」


もしかしたら専門用語かもしれないけど、ゲームとか漫画とか読んでたら一般教養レベルの単語であることは間違いない。物を移動させる能力以上のことは詳しくは知らないけど。


「まず射程距離が気になるな。それと物の重量制限。どれくらいのものを飛ばせるのか?車とか飛んできたら流石に殴れない。……殴れないよな?」

「まぁ、流石の僕でも」

木々村くんには僕の動きを見せたことがないけど、なぜかそれなりに動ける存在だと認識してもらってるみたいだ。

「デカすぎると避けることもできない。流石の僕でも」

「こっちも遠距離武器を使って攻撃するのもリスクがある」

スルーされた。「流石の僕でも」を繰り返すのはツッコミ待ちとしてはちょっと弱かった。

「相手がこっちの放った武器を返して来ないとも限らない」

「なるほど」

諦めて普通に会話する。しかしなるほど。それは厄介だった。遠距離武器が危ないとは。手裏剣とか考えてたけど、投げた手裏剣は逆に相手に使われる可能性があるわけか。


「だから、そういう相手は、見つけ出して本体を叩くのが一般的だ。師匠はそうやっていたはず」


「そうかー。やっぱり見つけないといけないかー」


遠距離武器で戦えればそれがいいと思ってたけど。

まぁ、僕的には近接戦に持ち込んで、「えいやっ」てのも抵抗ないから、都合はいい。


でも、そうなると相手を探すために木々村くんの能力がめっちゃ欲しくなる。今日も協力してもらおうかな。

あれ?だとすると、近づいて、えいやっ、てやるのは基本的に木々村くん?


学校の外に誘き出さないといけないね。


「射程距離、物量と重量。色々と考慮しないといけないけどな……」

と言って木々村くんは黙った。

そして微かに。僕の思い込みでなければ、ほんの少しだけ嫌そうな顔をした。


木々村くんはこの後の流れを少し想像したのかもしれない。


僕に駆り出されるのが嫌なのかな?

でも、そんな!

1番簡単な方法が僕が囮になって、その間に木々村くんが見つけることだろうに。

今のやり取りでそういう流れになるじゃん、絶対。


「じゃあ、木々村くんにも手伝ってもらおうかな」

「能力者相手ならそれは勿論俺も加わるつもりだ」


「あ、そうなんだ。てっきり僕の手伝いするのが嫌なのかと」

「いや、それは問題ない。だが、これからしばらくお前と一緒にいないといけないのかと思うと……」


「ははは。そういうね」


失礼な奴だな、と思うかもしれないけど、僕自体が嫌、というより、僕が木々村くんに対してどうでもいいいじりをし倒してきたから、こんな反応になるのであって、どっちかっていうと、僕に非があるっぽいんだよね。

僕としては親愛の証なのにっ!

うーん。いや、ごめん。流石にあざといか。

単純に木々村くんのノリを調教してるだけなんだけど。

木々村くん、普通のノリじゃないでしょ?

ちょっとくらい遊びを入れた方がいいと思うんだよね。


僕の行動に対する僕の心の中の言い訳はよそに、木々村くんは会話を続けた。

「まずいつ相手に遭遇するかわからないだろ?」

だから、これから僕と一緒に能力者を毎日張らなくちゃいけないだろ?ってことだよね。

まぁそうなんだけど、でも

「また今日僕が体育館に行くから、その時に出てきたらいいね」


そしたら1日で終わる。

でもこればかりは相手の気持ち次第ってね。


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