67-2「初めて能力者に襲撃された」②
敵の正体がわからないまま逃げることになっている。
能力的には投擲能力だろうか。
こんなに重いものをぶん投げて、僕のところまで届かせて、それでいて、僕からは投げている本人が確認できない。物陰から隠れてモノを投げて相手にぶつけるホーミング能力でも持っているのか。
厄介だ。
体育館からは離れ、周りは開けているというのに。
遮蔽物がないことによって、逆に僕が隠れることができないので、失敗だったかもしれない。
まぁ、死角から飛んでくるわけではないので、避けられるけど。
辺りは暗いから、小さい殺傷能力のあるものを投げられたらちょっとキツいかもね。
とにかく、学校はまずい。
僕は学校を出る事にした。
人通りが多いところに行くのは嫌だった。
無関係な人に被害が及ぶことは避けたかった。
だから、安全なところ?に逃げようとしていた。
大通りは避けたい。この時間とは言え、車も
往来する。何故か人も結構歩いてる。
まぁ、今の時代、誰もいない通りとか、ほとんどないかもだけど。
そうやって逃げている間も構わず、僕に物は向かってきてた。コンクリートブロックも、それ以外のモノも向かってきた。
コンクリートブロック以外のものが飛んできたということは、落ちた時に聞こえる衝撃音などで判断できた。
ダメージを食らわないよう捌くだけなら簡単だけど、もし僕以外の人が狙われたとしたら、僕は守れるだろうか?
ちょっと厳しくないか?
それに、全然攻撃が止まないというのもおかしな話だ。
自分で言うのもなんだが、僕はかなり速く逃げている。
なのに振り切れていない。
相手は乗り物でも乗っているのか?
仕方ない。
学校の敷地から逃れ、ある程度逃げた後、僕は謎の飛行物体たちに対処することに決めた。
未知の領域に首を突っ込むのは不得手だけど。
多少のものなら捌けるだろう。
もうちょっと行けばグラウンドのある公園があるので、そこに向かうことにした。
道路からグラウンドを覗いてみたら誰もいなかった。ちょっとした電灯で照らされている地面は広々と見晴らしがよかった。
ちょうどいい。隠れる場所はない方がやりやすそうだ。
直線前の競走馬の如く、スピードをぐんと上げ、公園の中に入り、グラウンドの中央を目指す。
さあ来い!来る方向を見定めて僕の方から仕掛けてやる!
という勢いをもって開けた場所の真ん中で僕は構えた。
攻撃は飛んでこなかった。
ありゃ。
あからさますぎたかな。
そりゃこんな開けたいかにも攻撃してくださいなんてところで、構えていたら、何か策があるのかと警戒されてもおかしくないかもしれない。
あるいは、流石に居場所がバレると踏んだのか。
あるいは、僕の走りが速すぎたか。
ちょっとだけ僕の身の安全を考えすぎてしまったかもしれない。どう転んでも僕が対処できる場所だったから。
もっとあからさまに僕に利がない場所に誘き出した方がよかったかも。
30秒ほど様子見して何もなかったらまたこちらから動き出して、それでも何もなかったら、帰ろうか、ということにした。
こういう時、木々村くんがいたら、楽だったのかもなぁ……と思う。
木々村くんなら、能力使った相手の場所わかるだろう。
じゃあ、今から呼ぶかと言われたら、時間が経つと彼の精度も悪くなるみたいだし、それも悪いかな。
今度一緒に来てもらうことにしよう。
夜の公園だけあって、ライトは光をほのかに地面に当てているけど、一見したところ、先程と同じように人影はなかった。
いたとしても、テストも終わった時期なので暇を持て余した学校帰りにたむろってる高校生とか、出来る限り長く一緒にいたいと思う互いの家を根城にできないカップルとかがいるかもしれないってくらいだった。
じっとしていると聞こえるのは虫の鳴き声、それに遠くを通ってる交通の音。
後は余程注意しないと認識すらできない雑多な音。
だから、ジャリジャリと、砂を踏み締める音はとてもよく聞こえた。
後ろの方から、誰かが近づいてくるのがわかった。
少し驚いた。こっちに向かってくる?
もし近づいてきているのがさっきまで相手にしていた人物だとしたら、明らかに射程圏内だ。
相手を誘き寄せるために選んだこの場所ではあったけど、近づかれすぎて、逆に僕が不利な状況に?
予想していた方向とは反対方向だった。
さっきは、30秒経ったら帰るって思ったけど、その予定は変更することになるかも。
僕は後ろを振り向いた。
「あれ、君は」
みんなは見覚えがないと思うけれど、僕には見覚えがあった。顔と名前も一致する。
そこにいたのはクラスは違うけど、同じ学校の男子生徒。
澤河仁。
「おー。やっぱりか。凪元じゃん」
「うん。そうだけど」
「俺?俺は7組の……。ていうか、こんな所で突っ立って何してんの?」
こんな所で。
こんな所で、襲われてたから、それを返り討ちにするかどうか迷ってた、なんて言ったらヤバいやつだと思われるのは確実だ。
返り討ちってのは言い過ぎか。
実際、様子見してただけだけだし。
もう様子見が出来なくなったけど。
こんな所で何をしているのか?という質問には無難に答えておく。
「ちょっと夜風に当たりに。散歩してた」
「ふーん。なんか、しばらく立ってたから何かと思ったけど」
どうやらちゃんと見られてたらしい。
「ちょっと休憩してて」
「こんなグラウンドのど真ん中で?」
そうなんだ。グラウンドのど真ん中。
普通だったら椅子に座ればいいものを。
僕は、早朝のランニングの後、河原で日の出を見るがごとく、グラウンドのど真ん中に立っていた。
今は夜だけど。
だから月でも見ていたことになるのかな。方向違ったけど。
だから僕は言った。
「そうだよ」
何一つ不自然なところはないよ、と言わんばかりの当然さをもって。
何も問題ないでしょ?
「そうなのか。椅子に座ればよかったのに」
公園には座る用のベンチがある。そこのことを言っているのだろう。
「公園のベンチって座るのに抵抗あることない?」
「え、潔癖?」
潔癖ではない。どっちかっていうと、汚れてても平気。山の中で這いつくばって移動する必要があるならできるし、ちゃんと手を洗ったりしてくれていれば、友達が作ったおにぎりも平気だと思う。
だけど、座るのに抵抗があるって答えたのは単純に面倒だったからだった。
木々村くんが僕に対してつれない返事をするような感じ。
他人から絡まれるのってすごく面倒。
どーでもいいやんけ!
ってね。
木々村くんは僕がダル絡みをするたびにそう思っているだろう。
そういったダル絡みを回避するために至極真っ当な。
納得に値する理由を述べたと思うのだけれど。
どうやら、そんな僕の気遣いにも関わらず、目の前にいる男は僕に話しかけてこようとする。
まぁ、いいか。
もう本当に様子見が無駄になったろうし。
仕方ない。諦めてもう少しまともに対応しよう。
「まぁ、そんなもん。そこまでじゃないけど。公園のベンチには座りたくない」
「そうか。お前この後暇?」
「別に用事はないけど」
「そうか。コンビニ行くんだけど、一緒に行かない?ジュースくらい奢るよ」
何でそこまで親しくないやつにジュースを奢るんだ?と言う疑問は浮かんだ。
僕だったら話したい時に木々村くんに何かモノで釣ろうと思うことはある。
木々村くんはモノに釣られないから、野生のアライグマを懐かせようとするがごとく、効果の薄い餌付けではあるのだけど。
けどそれはそれなりの親しさのある間柄だから成立するもの、じゃないのかな?
僕とこいつにそれほどの関係がある?
いや、今からそういった関係を作ろうとしていると言うことかもしれない。
仕方ない。無駄な争いを減らせるかもしれないし。虎穴に入らずんば虎子を得ず。
僕は誘いに乗ることにした。
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