64-報告1@校外


殿子さんに師匠が今度こっちに来る、と言うことを伝えたら楽しみにしていた。

デートしなきゃ、とか、どこにお出かけしようかなー、とか。

殿子さんのそういう発言を聞いたり様子を見ていると俺も殿子さんとデートできたらな、と思うのだけど、デートと呼べるものになるのかは甚だ疑問だ。実際はお出かけの付き添い、くらいのモノにしかならないだろう。

殿子さんは、俺も殿子さんとデートしたいですと言ったら一緒に出かけるくらいはしてくれるだろうけれど。

逆に喜ばれるかもしれない。表面的には。俺が誘ってくれた、と。

しかし表面的に喜んでくれるものではあっても、一緒にお出かけなんてものは、俺にとってご褒美すぎるからなんというか、気が引ける。

これは俺の精神的な枷だ。

この枷が取れるようなことがあれば、誘ってみてもいいかもしれない。


それと、学校内での能力のことを思い出せなくなったことも伝えた。

殿子さん

「そんなことになってたんだ。だから、最近学校の話が勉強とかテストとかの話になってたのか」

と。

やっぱり殿子さんは殿子さんで、違和感があったらしい。




俺は師匠から聞いた話の一部、原因は池崎ではなさそうだ、ということなどを凪元と古今泉に伝えることにした。

学校の校舎内では例のごとく何も思い出さなかったので、学校が終わった後に直接会って話した。


まずは、凪元に。

能力者を見つけない限り俺はこのままだと伝えると、凪元は露骨に残念そうに肩を下ろし、ため息を吐いた。わざとらしいオーバーリアクション。

「木々村くんに手伝ってもらおうと思ったけど、今は無理かぁ……せっかく今まで馴染んでもらってたのになぁ」

「怪異に対して俺に出来ることなんてないだろ」

「そんなことないよ。能力由来の怪異なら、木々村くんの知見があるとスムーズに進むし、対策が立てやすい。まぁ、学校での能力感知に関してはほぼ意味ないことがわかったけど」

力になれると言われると悪い気はしないのだが、凪元は一々ケチをつけてくる野郎だ。

だが、凪元に褒められるだけってのも気味が悪いから、これが適度な塩梅なのかもしれない。


「師匠からは学校外でできることをやれ、と言われた。学校外ではいつも通りに動けるからな」

「何?それって、外なら僕の手伝いしてくれるってこと?」

「学校内でのことに貢献できないのなら、学校外で貢献するしかない。能力の関わることを凪元の方から紹介してくれるのなら、俺の手間も省けるしな。何だそのニヤニヤ顔は」

凪元は俺が話している間に顔をニヤけさせていた。

俺がそれを指摘すると、凪元は「べっつにー」と言って、ニヤニヤ顔を崩さずに顔を逸らす。


少し鼻につくが、凪元が意味深なのはいつものことなので、こんなことに対して俺の方からこれ以上は掘り下げない。

大方、「素直じゃないなぁ」と思っているんだろう。


俺が誰の攻撃を受けているのか?について、昨日は池崎龍弥のものじゃないか?という推測を立てていたがそれに関しても、師匠からは池崎の能力じゃないだろう、と言われた旨を伝えた。

それに

「池崎の能力は、時間をかけるタイプだ。俺はあいつとは、そんなにも一緒にいなかった。

だから、能力にかかってないし、もし、あいつが能力を使っていたとしたら俺はそれに反応していたはずだ。だが、脅した後は一切能力を使わなかった」


「そうだったんだ。昨日そのこと言ってくれたら良かったのに……って、アレは屋内だったね。学校内のことだから、仕方ないかー」

昨日空き教室で検証した時のことを言っているらしい。アレと言われても俺には覚えがない。

もっと具体的に言われたら思い出すこともあるようだが。


「学校内でのポンコツ振りはホントどうにかならんかね?」

改めて俺の方を見て呆れた様子だった。

ホント好き勝手に言ってくれる。俺だって好きでポンコツになってるわけじゃない。


「学校内でのことは僕がやるよ。また木々村くんが動けるようになったら手伝ってもらお。それまではまた外のことで誘うから」


「まだそんな残ってるのか?」

「うん?怪異関係の仕事?終わることはないかなー。ムカつくことに。とにかく数が多いよね。それに新しいのもどんどん出てくる。今日もこれから仕事だし」


「そんなに多いものなのか?」


「それはここの地域柄もあるかなー。元々多い場所だから、僕もここで修行するように言われてたくらいだし」

「修行?」

「まぁ、事件解決することが修行になるってやつよ。僕の力でやってこいってね。ここのところ毎日よ」

「そうか。お前も大変だな。だが、にしても、数が多すぎないか?そんな毎日必要なのか?」


「僕が優秀すぎるから、仕事を見つけられちゃうのかもねー」

自分を上げる発言に対して冷ややかな目線を送る。

凪元もふざけて言っているので、本気ではない。

「まぁ、それは冗談にしても、おじい様に聞いてたよりは確実に数多いかな。実際のところ、発生させてるやつが、いるんじゃないかな?とは思ってる」

「霊能力者、ってやつか?」

「あー……まぁ、そういうのもあるかもね。いるだけで霊を集めちゃう人って実際いるし。

でも、今回はそういうのっていうよりは、もっと恣意的なものを感じるかなー」

「恣意的なもの?」

師匠も恣意的なもの、と言ってたな。何か関係あるのかもしれない。単純に言葉が一致しただけだが。

「そう。噂話をわざと拡散してる、というかさ。新興の怪異が多すぎる。それこそ、能力使ってるって感じ。僕の身内が僕への試練のつもりで増やしてる可能性もなくはないけど」


恐ろしいことをサラッと言った。

そんな身内に裏切り者みたいな存在がいるのか。


「これは僕の仮説なんだけど、能力者が多い地域は、僕たちが対処しなきゃいけない怪異も増えてるんじゃないかって思う。能力者が、自分の能力を隠すから、必然的に怪異のせいだって噂が広がる」


筋は通っている。


「その逆もしかり」

その逆とは?

「僕の仕事が多いところではきっと木々村くんの仕事も多いはず。

大変だなー、なんて他人事のように言ってる場合じゃないかもよ」

また茶化すような言い方だ。

凪元は真面目な話の合間におどけた会話も混ぜてくるから、真面目に聞く方も疲れる。俺は軽く流すことも大事だと学びつつあった。



「学校内で能力使ったのがわかるようになったら楽しみだね!」

結局凪元も、俺の能力をアテにしているということだ。だから、凪元も俺のこの状況を解決するように動くはずだ。そういう意味では心強いと言えなくもない。

だが、

「きっと忙しくなるよ!」


凪元は会話の締めくくりとして、俺に向かって呪詛とも言える言葉を吐いた。

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