62-「ちょっとダメージデカいよね」


結果から言うと、古今泉ちゃんの言ってたことは当たっていた。

15分くらい、無理矢理木々村くんに能力関係の会話を続けさせた。

そうしたら、覚えていた。


逆に何か違う話題になったら、1分未満だろうと何だろうと、問答無用で忘れる。


そして、自分から能力関係の話題を思い出すことができない、っていう結論になった。

思い出すには直接話題を振られる必要がある。

際どい、何とでもとれるような話題振りでは気づかない。


「すごいピンポイントに忘れさせるんだね」

「そうだね。捕まえられないようにするために池崎がやったのかな?」

まだ池崎がやったという、確証はないんだけど。

そこは専門家の意見を聞きたいところ。

木々村くんがこんな状態だし、木々村くんの師匠さんとか、その周りの人が何とか教えてくれたらやりやすいんだけど。


「ねぇ、凪元くん。さっき学校外なら普通って言ってたけど、どこの範囲ならダメでどこまでなら大丈夫かって試した?」


「いや、まだ試してない。確かに、学校からどれくらい離れたら大丈夫なのかを確認する必要はあるね。古今泉さん、時間大丈夫?」


「うん。私は大丈夫だよ」

「ありがたい」


「木々村くん、外出るよ」

「おう」

木々村くんが、快く応えてくれた。


木々村くんは、僕たちの声に反応しないわけでは決してない。

だけど、どの程度思考が働いているかに関してはわからない。

僕たちが木々村くんを置いておいて2人で話し合ってる間、放ったらかしにした。

普通放ったらかしにされると気分は良くない。

だけど、木々村くんの反応からは、そう言った機嫌の悪さ等は感じられない。


というより、木々村くんの思考が読めない。


変な木々村くんじゃなければ機嫌悪いとか、何かを聞きたがってるとかわかるんだけどな。


後でちゃんとしてるときに聞くか。



僕たちは外に出た。

門を出る前はさっきまで通りのポンコツ具合だった。

校舎内に限定された話ではなかった。


まだ生徒が沢山の生徒が活動しているグラウンドの一部分を少しだけ使わせてもらって試したり、体育館の裏側だとか、校舎裏の誰も来ないようなところでも試してみたけど、ポンコツ具合は変わらなかった。

「学校内」は、本当にダメだったようだ。


あと試すべきは、学校外。特に門を出てからどうなるのか?ということだった。

校門は二つあって、大きい方の校門は、木々村くんが帰るときに使う方向。

多くの生徒がこっち側から通ってくる。


門から出て、少しだけ、歩道までに学校の敷地っぽいところがあるのだが、そこの部分から急に木々村くんは記憶を保つことができた。


「なるほど。記憶は保てるけど、学校内で起きた能力関係のことは全く思い出せない。これじゃ、木々村くんは仕事をすることができないね」

「まさか、こんなことに」


流石の木々村くんもかなりショックを受けているのを隠そうとしてない。

いつもなら、隠し切れてないまでも、隠そうとするのに。


「でも、校門から出たらいつも通りに戻るんだね。急に。木々村くん専用の結界でもあるのかな?」

古今泉ちゃんは何やら考え込み始めた。古今泉ちゃんも、ここまで僕たちに付き合ってくれた。もう部活も終わりそうな時間なのに。

能力使えるのが木々村くん以外では古今泉ちゃんだけだから、ありがたい。


「結界かぁ。なくはなさそうだね。僕には何も感じられないけど。あ、木々村くん、どう?何か感じる?」


「いや、感じないな」

「マジ?これ、能力じゃない系?」


「俺が感じるのは、本人が能力を使用している時、あるいは、能力を使用した後しばらくの間、という場合が多い。

能力を使っている本人が近くにいないから、感じないという可能性もある」


「そっか。能力が使われてるものが近くにあったとしても感じるわけじゃないのか」

「感じるものもあるけどな。今回のは感じないものなのかもしれない」


「ねぇ、木々村くん。私が敷地内で能力を使ったのを、外から感じることってできるのかな?勿論見えてないときに」

古今泉ちゃんが何やら考えていたのはこれだったか。その提案は確かに気になるものだった。

「古今泉ちゃんの能力を校門のところで隠れて使ってみる?」


「そうだな。頼む」

と木々村くんが言ったので、古今泉ちゃんが校門の裏側に移動して、そこでしゃがむ。


「どう?木々村くん?」

古今泉ちゃんが尋ねると、木々村くんは既に困惑した表情だった。

「いや、能力、使ってるのか?さっきと変わらないままだ」


「変わらないって?」

「古今泉、もう能力を使っているってことでいいのか?」

「うん」

古今泉ちゃんも困惑気味に答える。

いや、予測できてた範囲だけど。



「これは伝えるのが難しいが、校門から向こうのことは、えーと……。見ていないと認識できないようだ……。だから、もっとはっきり言うと、古今泉が能力を使ったのはわからなかった」


「古今泉ちゃん、変身したまま立ってみて。木々村くんに見えるように。大丈夫。今誰もいないから」


古今泉ちゃんが立ち上がり、姿が木々村くんにも見えるようになった。

「わかった、見えていれば、新たに能力を使用したのだと分かった」

その瞬間、木々村くんは言った。



「なるほどね。じゃあ、やっぱり、この攻撃が能力によるものだとしたら、能力使ってる本人を直接見ないとダメってことかな」

これは厄介だな。解決するには木々村くんじゃどうしようもない。学校内では。

「それか、これが能力由来ではない現象か、だな」

「そんなことあるの?」

古今泉ちゃんが尋ねた。

「いや、可能性は低い……とは思う」

そーだよね。僕はあまり詳しくないけど、木々村くんピンポイントで、能力関係のことを思い出させないようにしてる能力だから、多分ジャンル的にはそっちだよね。


「それにしても、何で木々村くんだけがこんな風に?」

古今泉ちゃんが言う。

「さぁ?目立ちすぎたからかなぁ?」

僕は検討がつかなかったけど、古今泉ちゃんに反応しておいた。

「目立っていた……?俺が?」

木々村くんは僕の言葉の一つに反応する。


「そうだよ。知らなかった?轟剛力先輩を倒したっていう話で超有名人だからね、木々村くん。ね、古今泉さん?」

「うん」


「そうか」

木々村くんは無表情だった。納得してはいない様子だ。

木々村くん自身は轟剛力先輩を倒したとは思っていないから、それで有名になるのは、腑に落ちないのかもしれない。



「ところで、今日、校舎内でどんな検証したか覚えてる?」

木々村くんは、1秒ほど考えたが、

「いや、覚えていない」

と、さも当然とでも言うかのように答えた。

まぁ、そうだよね。

「僕が今日の検証結果を木々村くんにも送るから、それをお師匠さんにそのまま転送してよ。それでできれば詳しい話を聞いてきて欲しいな」

「ああ、わかった。今日は世話になったな」


「いいってことよ。昨日の敵は今日の友達。同じ釜の飯を食った天津飯ってね」


「何それ、意味わかんない」

古今泉ちゃんが少し笑った。不意打ちで出したから滑り寄りの小ウケってところかな。気を遣ってもらったのもある。元ネタは小さい子が大好きなパンのヒーローで、天丼と一緒に食べたんだよね。あれ?天津飯じゃなくてカツ丼だったかも。天津飯はバトル漫画か。


木々村くんは何言ってんだおまえ?みたいな顔だった。多分元ネタと違くないか?ではなく、僕が何を言ってるか本格的にわかってないんだろう。

猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏、馬耳東風。

いや、こんな風に言うと、僕がとても高尚なことを言ったかのようになっちゃうか。

僕の発言の是非はともかく、作品自体はとてもいいものだから、木々村くんにも体験して欲しいところだ。



「私も木々村くんに助けてもらったから。今度は私が助ける番だから。また協力できることがあれば、協力するね!」


検証が終わった後も古今泉ちゃんは元気だった。

能力が関わる非日常を楽しんでるように思える。

ワクワクするんだろうな。気持ちはわかる。

異世界への冒険1日目、みたいな。



検証もできたし、木々村くんにもあとで連絡するってことで話はついた。

今日はこれで解散した。

外での検証に1時間くらいかかってしまった。

6月なので、もう外で出歩くには暑い気節だなぁ。



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