57-肩透かし


凪元との会話で俺自身に異変が訪れていることを自覚した俺は師匠に相談をすることを考えていた。


師匠に相談……。

「相談かぁ〜……」

めちゃくちゃに気が重かった。



今まで何で気付かなかった?

師匠にブチ切れられる未来が見えてしまう。

学校における不思議な出来事を調査して、能力関係のことなら原因も明らかにする。

俺がこの高校に入学した1番の理由であったのに、そのことを忘れてのうのうと過ごしていた。

気が緩み過ぎだ。

凪元が言っていた内容のことは全く耳にも入ってこなかった。


凪元が言っていたように、俺は周りの人たちともっと合わせる必要があったかもしれない。

そうすれば、何らかの噂話も俺の耳に入ってきたかもしれない。



明日から、いや今から調査を始めてそれで何とか誤魔化せないか。

今からクラスの人たちに色々聞き込みか……。


いや、でも、俺が調べている間に事態が進行し、取り返しのつかないことになってしまったら……。


色々と無理がある。

もう夜だし。


それに例え俺が今から色々と情報を手に入れられたとしても、実際に調べられるのは明日以降になる。聞き出した情報よりも、実際に調べたことは何だ?お前は能力の使用を感じたのか?と師匠からは必ず突っ込まれる。


それに色々と情報を一気に得た場合、俺が今までサボっていたと思われてしまい、バレてしまう。


はぁ……。

そもそも誤魔化すなんてよくないしな……。


師匠に報告しないとな。

そんなもの最初から決まっていた。

うだうだ言う前に最初から決まっていた。




師匠から無能の烙印をもらいに行こう。




「師匠、報告があります」

いつもよりも緊急性が高い報告をします、と言って師匠に無理矢理時間を取ってもらった。

師匠は割りと早めに時間をとってくれた。

「急にどうした?凪元と一緒に行ってきたことで何か進展が?」

「いえ、そうではなくて。その報告もついでにしようと思ってはいたんですが、もっと大事なことです」

「……」

師匠の沈黙。これは先を促されてる。

「えっと、その。あの、何て言うか……」


「何だ。もじもじして。はっきり言え」


師匠に言葉で言われてしまった。俺のグダグダが相当ヤバかった。

俺はまだ言う勇気を持てていなかった。


「師匠。申し訳ありません」

「……」

謝罪から入ったのに、沈黙が訪れるってヤバいな。自分から針の山に足を踏み入れるかのようだ。


「今まで、能力関係の事件、見逃していたかもしれません」

「どういうことだ?」


「学校内で使われた能力を感知できてないからもしれないということです」


「……いつからだ」


いつからだったのか。それは大きな問題だった。高校に入ってから、ではないのは確実だった。

轟剛力雷斗に対しては能力の使用がわかったからだ。そこまでは確実にあった。

後は……。


「轟剛力と古今泉の能力に関しては感じていました。けれど、それ以外では。学校では感じていないと思います」


「……どのように気づいた?」

間に挟まる沈黙が怖い。怖いが、俺はすぐに返事をする。

「凪元に最近起きている学校での出来事を聞いて。それが能力者が関わっていることかもしれないと考えられて……。

それで気付きました」


「……そうか」


そうか。と言ったきり、師匠は黙ってしまった。


「……」


ヤバい。これは怒りの余り、何を話すかを冷静になって考えている時の師匠だ。

俺は師匠からの言葉を座して待つしかなかった。全てを受け入れる。どんなことを言われようとも。

さようなら、殿子さん。そんな覚悟までもした。


だが、何もなかった。


「師匠……?」

耐え切れず、俺は師匠に声をかけた。


「……ああ。起きてしまったことは仕方ない。お前は原因を調べろ」


「え?」

「うだうだ言ってても仕方ない。これからどうするかの方に目を向けろ」


「はい。わかりました」


あれ?おかしい。

師匠が怒らない。

いつもだったら、

「どうしてお前はそんなにグズグズしているんだ。何のために学校に行ったのかわかってるのか?」

「注意力が足りてない。基礎がなってない。それでは命を落とすぞ」

「考えが足りてないのか、お前は」


などの指導の言葉が送られるはずなのだが。

師匠から盛大に怒られなかったが一体どういうことだ?


色々と考えないといけないことが多い。





どうして師匠から罵倒を浴びせられなかったのかも気にはなる。確かに、俺は覚悟が足りなかった。

師匠にはっきりと俺のミスを伝えることができなかった。

そして、師匠の沈黙により、覚悟を決めた。

しかし、その結果、師匠は、これからのことを考えろと言った。

思ってた以上に温かい言葉だった。

罵倒を浴びせる価値もないと思ったのだろうか。


いや、しかし、こんなことを考えるより、まずは師匠に言われた通り、これからどうするか?を考えよう。

原因を調べろ、と言われた。

学校内で何かが起きているにも関わらず、俺が何も気付いてないし、耳にも入ってない理由を考える。

俺が今まで腑抜けていたから、というのも真面目にありうる。

しかし、よく考えたら、師匠が、俺に「原因を調べろ」と言うくらいだ。師匠には何か考えがあって、俺に調べろと言ったのではないだろうか?だから、俺に原因があるとは考えていない?

と考えるのが素直な考え方だ。


なので、俺が単純に腑抜けていただけ、路線は今のところ考慮しない。





凪元に協力を仰がないと流石にダメかもしれない。

アプリでメッセージを送る。



「凪元」

「どーしたの?木々村くん」

「学校内の不思議な出来事について俺が感じ取れなかった件についてだが。それについて調べるつもりだ。凪元に協力してほしい。」

「いいよ。僕も木々村君に頼むつもりだったし」

「助かる」

「いいってことよ。困った時はお互い様。持ちつ持たれつ三寒四温の水餃子だからね!」


凪元が何を言っているのかわからないが、これで明日、凪元と話せばよい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る